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被差別部落問題 ――差別解消への道のり

12月4日、最高裁判所は、被差別部落の地名リスト(以下、「地名リスト」)を公開した出版社「示現舎」に対し「出版差し止め」と「損害賠償命令」を言い渡しました。判決は2021年の一審および2023年の二審を踏襲したもので、Webサイトから「地名リスト」を削除すること、「地名リスト」を出版することの禁止、計550万円の損害賠償を命じたものです。


判決が下された最高裁判所第3小法廷

 

「地名リスト」の公開を非とするか、是とするか、あなたならどう考えますか?

もし、彼氏(彼女)が被差別部落出身者であることを「地名リスト」で知ったらあなたはどうしますか?

私はこの問題の専門家ではありませんが、この問題に深く関わってきた某研究者のサポート役をしてきました。今回の最高裁判決は被差別部落出身者側の権利保護を優先する形で決着しましたから、「地名リスト」を公開することのデメリットを明確にした判決といえる反面、差別解消に向けた情報公開はどう評価されるのか? という難問に答えることはできませんでした。「地名リスト」を公開した宮部龍彦「示現社」代表は、部落問題の歴史を情報公開し、洗いざらい議論をしようという立場に立っており、「地名リスト」の公開を違法とすることは被差別部落問題の先送りに過ぎないと主張しています。

それに対し、多くの人は差別や偏見を助長させ得る懸念から「地名リスト」の公開に反対しています。この立場に立つ多くの人は、差別や偏見はこの問題を伏せておけば「自然消滅」するであろうという見解を持っているため「寝た子を起こすな論」と称されています。前述した宮部氏は、この「寝た子」を寝かせておくだけの議論こそが根本的解決を先送りしていると反論しています。

100年間続いている被差別部落問題は、これからも、「寝た子を起こすな論」に象徴されるように、差別解消に向けた情報公開の正当性とその範囲をめぐり激しい論争に晒されることになるでしょう。

 

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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