読者の皆さんは、山田五郎さんの最後の講義の動画を見ましたか?“メメント・モリ” という名言(“死を忘れるな”という意味)について解説していて、どう生きるかを考えさせられる素晴らしい内容です。最後の方で五郎さんが触れている”Carpe Diem”という名言(英語で”Seize the day”、日本語で“一日一日を精一杯生きろ”という意味)も、非常に奥深い、私が以前から好きな言葉です。
ところで、私は血液の癌を患って3年経つ中で、残り人生をどう生きるかについて自分なりの指針を確立したのですが、改めて考えるとこの二つの名言に重なる部分があるなあと思っています。
具体的には、日々の仕事でもプライベートでも何をするか決める場合、1年後に死ぬとしたら今この瞬間どう行動するのがベストかと考えて決断するようにしています。
3年前に残り人生10年と言われた時も、限られた残り時間を有効に使うようにしよう、無駄な仕事などは止めるようにしようと思ったのですが、気がつくと病気になる前と同じ、仕事をどんどん詰め込む生活に戻っていました。
今までと同じパターンの生活を続ける方が楽だし安心というのもありますが、まだ何年か生きられると思うと余裕をかましてしまい、油断や妥協が生じていたのです。
そこで昨年から心機一転、あと何年も生きられると思わず、1年後に死ぬとしたら今どう行動するのが一番後悔しないかと考え、日々何をするかを決めるようにしたのですが、このアプローチに変えて安易に妥協しないようになり、また残り人生でやっておきたいことを前倒しでやるようになったので、良かったと思っています。
ついでに言うと、もう一つ自分なりの指針があります。残り人生はお世話になった方への恩返しを最優先するということです。人生を振り返ると色んな方のお世話になったことで今の自分があるのに、よく考えたらそれらの方に恩返ししてなかったので、このまま死んだらバチが当たって地獄に落ちるなあと反省したのがきっかけです。
ただ、結果的に、自分のためとか儲けのためより恩返しを優先するようにしたら、気のせいか逆に色んなことがうまく動くようになっているので、この指針も意外と正しいのではと思っています。
ちなみに、最後に余計なことを一つ。私はジジイになっても未だに音楽は海外のメタルしか聞かないのですが、私が大好きなバンドはこの二つの名言を曲にしています。
まず、アーキテクツというメタルコア・バンドは、10年前にメンバーの一人が癌で死んだことを受けて、“Memento Mori”というタイトルの曲を出しています。
また、私が30年以上追っかけしているプログレメタルのドリームシアターは、30年前に”A Change of Seasons”という23分の大曲を出していますが、この曲のメインメッセージは”Carpe Diem”です。
メタルって意外と奥深いんです。。。

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。
