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出さなかった陳述書(後) ■ ストラップ

教師という強者が、自らの責を逃れんと数々の脅しを用い、虚言を弄してまで弱者の心を追い詰めました。事件が明るみに出てもまだ、何の責任も負うまいと企て、裁判までをも利用して、脆弱な女の子の心を更に追い詰め、結果として死に至らしめました。そして今、自己保身のため、更に虚言を重ねて故人の尊厳すら踏みにじろうとしています。

優子さんは私に対するメールの中で、○○教師に対する無念を語り、また、その苦しい心情を数々語っています。

弱りたいんじゃない。死にたいのでもない。消えたいんだ。裸にして縛られて、猿轡をされ吊り下げられて、強姦されて、ライターで身体を焼かれて、足を開かれて、異物を挿入されて、蝋をたらされ……いくら気が強いとはいえ、それを恥じないと思いますか…?

どうしてこんなふうになっちゃったのかな…。○○に会う前は、こんなことしなくても生きていけたのに。
死にたくて手首切ったことはあったけど、悲しみに駆られて切らなきゃ気が済まないなんてことはなかった。
私、狂ってる?探偵さん、私を見捨てないで…



優子ちゃんの写メ


衝動が止められない
あたいは生きたい
生きたい
泣きたい
本当に生きたいのに
助けて

○○のことなどもう二度と思い出したくない。死んだほうが楽だって、何度思っただろう?

生きたい
生きたい
生きたい


ああ、とても苦しいし、痛いよ。泣きたいくらい。こんな拷問、なんでこの世にあるの



そして、優子さんからの最後のメールの一文は「きっと、戻るよ」でした。


この事件が決着し、その後の近い将来「記者・調査員」と「相談者」としてでなく「友人同士」としての交際を始めることを、優子さんも、私も、大変楽しみにしていました。
優子さんとのやりとりしたメールに以下のようなものも残っています。

うん、そだ。よし! 自傷停止宣言!……をする前に、九坪さん、約束、約束。
ずっと、あたしといい友達でいてよ。

うん、うん、ありがとう、ありがとう。本当に。 頑張ろう! んで、いい女になってみせるよ。いいお友達になってね!♪ うし、自傷停止、宣言!

楽しいことを考えよう。事件が片付いたあと、デートする予定をたててみるとか?(笑)

あ、いいねいいね♪ なんとか言って前の日までお勉強しまくってその日くらいは遊びに行かしてもらおっと♪いつ頃になるかな? 楽しみ楽しみ♪♪ どこ行く?w わぁいわぁい、最高に楽しみだ! おててつないで行きたいな!w


私たちは彼女の心を救おうと、最大限の努力をしました。
しかし、優子さんは亡くなってしまいました。
ただ、亡くなったのではありません。
○○教師の加えた暴行の記憶にさいなまれ、心の病気になり、自分でも止められない自傷や自殺を繰り返し、それでも「生きたい」「死にたくなんかない」と泣きながら、のたうちまわり、苦しみ抜いた末に亡くなったのです。優子さんの笑顔を見ることはもう無いし、毎日のように届いていた優子さんからのメールが私に届くことも、もはや、ありません。

なればこそ、私は一歩もひくわけにはまいりません。
何を失おうと、何年かかろうと、この事件が「何も無かったこと」にされる「事実無根であった」などということにされることだけは、絶対に許容できません。
16歳の精神的に不安定な少女に対し、欲望を満たすためだけに暴行を加え、その心を踏みにじり、あまつさえ、自己の保身のためだけに、その子の心を追い詰めて死に追いやった、その事実を無かったことにされることだけは我慢できません。

 

九坪



ストラップ


ある調査員の使っている携帯電話に、ストラップがついている。
先端にクリップがついたもので、通常、胸ポケットに入れた携帯電話が落ちないようにするためのもの。

ところが、それはかなり前からクリップ部分が壊れてしまっている。これではストラップの意味がない。
しかし彼はこれを取り替えない。いつまでもそのままにしている。

彼がそのストラップを捨てない理由

探偵さん。仕事していたら、よく携帯電話を落っことすって言ってたでしょ? これ、よかったら使ってね。あたしからのプレゼントだよ。

そう言って、優子ちゃんが彼に贈ってくれたものだった。

ただ君を愛してる。心からそう思った。

 

壊れたままのストラップは、未だに彼の心を苦しめている。

 

 

渡邉文男

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