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『お笑いライブ経営は、あま~~い!のか?』岡田斗司夫

先日、下北沢でスピードワゴンさんたちのライブを見ました。
ライブはやっぱりテレビと違い、面白いです。
漫才は尺を使う、つまり時間を使って世界観を見せないと、なかなか面白さが伝わりません。
三四郎さんもテレビで見るときは「スベり芸」風のあつかいが多いのに、ライブで見ると圧巻でした。

しかし、満員の客席を見て、同時に不安にもなりました。
会場となった「しもきた空間リバティ」は、使用料が平日夜の部で41,000円。キャパは85名です。
前売りチケットはひとり1,500円だけど、チケットぴあに手数料8%と用紙代10円を取らます。
つまり実質ひとり1,370円×85名で、売り上げ総額は116,450円です。

この総売上から会場使用料41,000円を引くと、残り75,450円。
会場整理のスタッフも5人以上はいたし、彼らのバイト代をひとり5,000円としても25,000円です。
これで残額は50,450円。
登壇していた漫才師さんはスピードワゴンさんを含めて7組。これでは一組1万円のギャラも出せません。
会場には収録用のカメラも無いので、後にコンテンツ販売→リクープという手段も使えないことになります。
狭い会場で、受付は階段の踊り場です。だからグッズ売り場もありません。
いったい、このライブでは誰がもうけているのでしょうか?

もちろん、中にはタニマチのいる芸人さんもいます。
社長さんやスポンサーがついて、会場代や経費をポンと払ってくれる場合もあるでしょう。
僕もそういう社長さんを何人か知っています。
でも、そういう社長さんたちは総じて「不安定」です。
景気が良いのは数ヶ月か、長くて1年ぐらい。
ずっとサポートしてくれる人は、本当にマレです。

本来、あのライブを見るために客が支払うべき金額を試算してみます。
まずは必要経費。
会場費・・・5万程度
出演者ギャラ・・・ひと組あたり3万×7組=21万
人件費・・・会場スタッフ5名で5万
経費・・・チラシ等で5万
ここまでの合計で必要経費は36万円になります。

次回開催のためには利益も出さないとダメです。
会場を予約するための前払い金、チラシやチケットなどの印刷費とか、イベントにはいろんな「前倒し予算」が発生します。
これを作るためにイベント利益を15%乗っけて、41万4,000円。
かならず満席になる、と仮定して85人の客席で割れば、1人あたりの「正しい入場料」は4,870円になります。
あ、ぴあでチケット売るなら、実質5,500円かな?

では、この「本来あるべき価格」と「実際の入場料」のギャップ、5,500円と1,500円の差はどこからでたのでしょうか?
漫才師側、スタッフ側、運営側から出たんでしょうね。
出演する漫才師が、自分のギャラを低めで納得してくれる。
スタッフがボランティア的な動きをしてくれる。
主催団体や、芸人さんの所属事務所が「将来への投資」「知名度向上」などいろんな理由で、投資してくれる。
安いお金で本物の漫才を見せたい、と決意したので、彼らが赤字分を負担してくれたわけです。

不思議です。
僕たちはお笑いライブを見に行くときは、お客様の気分で行きます。
1,500円も払ってるんだから、笑わせてくれよな!という気分です。
でも、本当は出演者やスタッフや、開催事務所の人たちの「おごり」でイベントは成立してるのかもしれません。
漫才師やスタッフ、関係者や僕たち観客みんなが、すこしずつ「投資」してるんです。
そうやって維持されていくものを「文化」というのでしょうね。

 

岡田斗司夫

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