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内部告発を検証する6~舞妓の労働基準法の治外法権・置き屋での「お母さん」と「奴隷」給料〇万円から借金返済

前回「内部告発を検証する -舞妓さんの「お風呂入り」という接客とは-」に続き、6回目の連載は舞妓さんの生活の場である「置き屋」での序列関係です。

桐貴 清羽(きりたか きよは)さんは舞妓であった頃のご自身を「奴隷」であったと振り返っています。極めて、心理的に孤立した状態であったこと、そして自由が制限されるほど経済的に貧困であったことを「奴隷」と表現なさいました。

置き屋に入る以前、14歳の幼い桐貴さんは置き屋の「お母さん」のことを「実の」お母さんと同じように「困ったときには相談できるやさしい人」だと想像したそうです。ところが実際に置き屋に入ってみたら、置き屋の「お母さん」は序列関係の頂点に君臨していて、舞妓さんを「奴隷」として扱う人だと認識するようになったと言います。

桐貴さんは、当時の序列関係を「舞妓ちゃんはいじめていい人間」であって「和気あいあいという雰囲気ではなかった」と語ってくれました。そうした序列関係のなかで、少しでも「お母さんに気に入られなければならない」と感じ、居場所を失い心理的に追い詰められていったそうです。

さらに不可解なのは、置き屋に入ったときにはすでに置き屋に「借金をしていた」状態であったことです。つまり、どんなに舞妓として忙しく働き続けても報酬は1ヶ月に5万円。報酬の大部分は借金の返済に充てられていたそうです。

 


具体的に、借金というのは何に対する借金なの?

桐貴
昔は舞妓ちゃんは売られてきた存在だったのでお着物もお衣装も持っていなくて、それを買うための借金だったようです。でも、今の私たちは、別に売られてきてるわけじゃないのに、実際の舞妓の世界は「6年奉公」「10年奉公」などといって、6年から10年もの期間を借金の返済に費やします。「奉公」という名のもとに。だけどそれがなんの借金なのかは、私たちにも分からないんです。


置き屋で生活をするための生活費ってことかな。

桐貴
最初は、お着物代かなとも思ったのですが、舞妓ちゃんが着せてもらうお着物はお下がりです。髪飾りとか小物なども、お姉さんが買ってくれたり、お下がりを使ったりします。宝石もお下がりを使っていました。あとは、お着物の洗い代がかかりますが、それは破れたりしたら自分のお小遣いから直していました。どう考えても、借金が何を意味するのかは全くわかりませんでした。


もしかして、芸事を習うためのお金とか?

桐貴
とはいえ、日本舞踊、お三味線、お茶、鼓をお稽古するのは、多くて月一度ほどでした。借金を何年も負うほどの金額なのでしょうか。

 

今振り返ってもなお、1ヶ月にいくらの返済をしていたのか、結局、総額としていくら返済したのかなど、明細書も見たこともなく、分からないそうです。

次回は、舞妓さんがオフィシャルに花街で恋愛をする制度、すなわち「旦那さん制度」について深く掘り下げていきます。お楽しみに。

美しい花街の風景。伝統や文化を継承する街並みは若い女性の犠牲や苦労によって織りなされている。

 

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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