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妻は元国会議員2 ~「嘱託殺人罪」の被告人・大久保愉一医師の元妻

前回に続き、2回目の連載は「嘱託殺人罪」の被告人・大久保愉一医師の元妻、三代さんが夫の故郷である宮城県石巻市からの立候補を決断するに至るまでの過程についてみていきます。

それは2012年に第二次安倍政権が成立する直前の選挙でのことでした。大分県出身の三代さんが夫の故郷である宮城県に嫁いできたのはわずか数年前。宮城県に血縁も地縁もない三代さんからすれば、地域との繋がりを有する唯一の存在は宮城県内で医師をしている夫でした。三代さんはこれまで、自身の故郷である大分県で政治家を志してきたけれど、これからは嫁ぎ先である宮城県石巻市で医師の「妻」として政治家を志そうと決意したそうです。

自民党には誰かの「妻」として国会議員になった女性が少なくはありません。例えば、故永岡洋治代議士の妻・桂子さん、富士急行株式会社の社長である堀内光一郎氏の妻・詔子さん、故中川昭一元財務相の妻・郁子さんなどがそれにあたります。三代さんの夫は国会議員ではありませんが、地元で医師をしている夫を持つ候補者ならば地域からの信頼も得やすいのではないでしょうか。

三代さんは政治に対して能動的な一面を持つ女性であり、自民党宮城県連の「候補者公募」に応募したときは出産直後で、しかも赤ちゃんは首も座っていない状態でした。宮城県といえば立憲民主党の安住淳氏が非常に強固な地盤を持つところです。そこに血縁も地縁もない三代さんが挑んでいくとしたら、出産したばかりのお母さんであることや、よそから宮城県に嫁いできた「妻」であることを生かした上で、よほどインパクトのある政策を打ち出していかない限り、勝ち目はありません。

出産直後の、しかも、とてもユニークな人柄を持つ三代さんが自民党宮城県連の「候補者公募」に合格したのも、安住淳氏を打ち負かすような「フレッシュさ」があったからに他なりません。それほど、自民党の公募に受かるのは難しいことです。というのも、実は自民党が実施する「候補者公募」は、予め合格が決まっている「意中の候補者」が存在していて、その上で形式的に実施されることが珍しくありません。いわゆる「インチキ公募」です。大分県で三代さんは何度もこの公募のカラクリに傷つけられたと言います。そうした経験を経てやっとのことで公認候補者の座を手にしたわけですから、三代さんにとっての夫の故郷、宮城県は特別な場所となったことでしょう。

2012年の第46回衆議院解散総選挙では小選挙区で安住淳氏に敗れるものの、比例復活当選を遂げ見事に国会議員になりました。長年の夢を果たした彼女は夫や家族、そしてかけがえのない赤ちゃんに感謝の気持ちを抱いたと言います。しかし、実はここから自民党の金権政治、そして家庭と仕事の両立をめぐる夫との難しい関係へと本格的に巻き込まれていくことになります。

次回は、夫と国会議員としての仕事のはざまで直面した障壁、そして、政治家を断念する決断へと至るまでに苦悩した自民党の金権政治について書いていこうと思います。お楽しみに。

国会議員として初当選後、お子さんを連れて国会へと初登庁した三代さん。

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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