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メンタル不調気味な春 「うつ」に要注意! -更年期世代(45-55歳) -男性編-

前回に続き、今回は更年期世代・男性の「うつ」を取り上げます。

女性は「うつ」を発症する割合が男性に比べて高い一方で、通院する割合は低いという特徴がありました。「うつ」が表れる割合が女性の半数に過ぎない男性ですが、「うつ」が重症化するかどうかという観点からは男性の方がより深刻です。というのも男性の場合、死亡原因にしめる自殺の割合が高く、「うつ」などのメンタルの不調が深刻な事態を招いていると考えられるからです。

年齢階層別自殺死亡率推移(2014年)

大山博史ほか.2009「高齢者のうつ病と自殺予防」『Geriat Med』47, 1477−1482.を参考に筆者作成

厚生労働省の調査によると、女性の自殺者数はG7で最も多く、男性はアメリカに続き2位です。男性の自殺者数は女性の約2.1倍となっています。本当に日本における自殺率の高さは異常です。

なぜ、男性が多いのでしょうか。精神医学の分野では、男性の方が衝動的な行動に出る可能性が高いと考えられているようです1。つまり、メンタルの不調によってストレスを抱えた場合も、自殺などの衝動的な行動に出てしまう危険が男性に強く出る傾向があるということになります。衝動的な行動がどうして男性に多いのかを私なりに分析してみると、おそらく自尊心が男性にとっては重要であり、社会的立場(地位)やアイデンティティを優先するあまり、人に弱みを見せたり、人を頼って解決することを避け、衝動的な行動を取るに至るまで思い詰めてしまうからではないでしょうか。

かつて筆者の周囲には、「“苦しい”と感じること自体を男として恥ずかしいと思っていた」という男性がいました。彼は「うつ」に陥るほど悩まされてきた職場の重圧をすべて自己責任として処理していたため、悩みを打ち明けたり、助けを求めたりする機会をすべてスルーしていたのです。つまり、すべての責任は自分にあると認識することによって、衝動的な行動へと至るほど自分を追い詰めていってしまったのです。

春から夏にかけ、生活環境が変化するタイミングにメンタルの不調を感じることがあるかもしれません。そうなった場合にどう対処するかを漠然と考えておくことは良いことです。どうか、どんなに自尊心が重要であったとしても、不調だと感じた場合は受診することはもちろん、すべてを自己責任として抱え込んでしまわないように。今から自分に言い聞かせてみてくださいね。

1 三村將・衛藤理砂.2005.「疾患と性差4: 精神疾患―うつ」『治療学』(3),59-62.

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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