雨降り前の蒸し暑い夕方、1本の電話が鳴りました。
「探偵ファイルを見たんですけど、そちらは心霊専門ですよね」
違います。そのような内容でしたら、お寺さんか神社の方が良いかもしれませんが、取りあえずお話だけでも伺いましょうか。
「このたび訳あって先祖代々の墓を隣県に移しました。その直後から、家の中で不思議なことが起こるんです。仏壇がある部屋に常に人の気配を感じたり、誰もいないのに足音がしたり」
「黒い影のようなものを見たこともあります。そして、仏壇のお供え物がたびたび床に落ちているんです」
なるほど。それは確かに墓を移したことと関係がありそうですね。心当たりがあるので少しお時間をいただけますか?
後日、ある方とそのお宅に伺いました。
早速、仏間に通されましたが、霊感のない私でも異様な空気を感じます。その方は、仏壇から離れた部屋の右隅に座ると静かに目を閉じました。
数十秒の沈黙の後、「今、仏壇から大きな白い手が出てきました」と言われた瞬間、仏壇に供えてあった、真っ赤なリンゴがコロンとゆっくり床に落ちました。
えっ! と声が出ましたが、その方はまったく動じることなく、目を閉じたまま時折大きく頷いています。
数分後、静かに目を開けると仏壇に向かい、「わかりました。必ずお伝えします」と合掌されました。
「お伝えします。軍服を着た若い男の方です」
元々の墓地には自分の初恋の人が眠っている。戦地に赴く前、必ず生きて帰るからそのときは一緒になろうと固い約束をした。
でも、その約束を果たすことなく、遠い異国の地で無念の戦死。せめて、死んでからは離れることなく、その人と同じ墓地で静かに眠りたい、と訴えていたようです。
それを聞いたご家族は、すぐにお墓を元の墓地に戻し、懇ろに供養しました。その後、怪奇現象はピタリと収まったそうです。
ガルエージェンシー米子 (0120-21-9730)
開業から18年のベテラン支社。境港市、大山町、琴浦町、倉吉市、鳥取市、伯耆町、島根県松江市などを含む鳥取県西部全域にて主に活動中。全国上場企業や金融機関、弁護士や司法書士などの士業関係者からの信頼が厚く、多数依頼を受けている。