プロポーズから一ヶ月後に彼女が人気風俗嬢だったことを知った俺の話を聞いてくれ。
彼女と付き合って二年。先月プロポーズをしてOKを貰った。
お互いの両親に挨拶を済ませたけど、うちの家族は何故か良い顔をしなかった。
後日母親から電話があって彼女の結婚調査をしろと言われた。
結婚調査という言葉にピンとこなかったから話を聞いてみると、彼女の普段の生活に問題がないか探偵に調査をしてもらえということだった。
今まで知らなかったが俺の実家がある地域では結婚相手を調べることは当たり前のようにやっているそうだ。
俺は彼女は普通の人だから調査をしても意味は無いと言ったが、調査をしないなら結婚は認めないと言われ、渋々調査をすることにした。
ちなみに調査費用は両親が出すと言った。
彼女は27歳で看護事務をしている。友人に誘われて行った合コンで知り合った。
かなりひいき目に見れば橋本愛に似てなくもない。
同棲はしてないので普段の生活の全てを把握しているわけではないが、仕事から帰宅した時には毎日俺にメールをくれる。
嘘の時もあるかもしれないが彼女のメールを信じれば、帰りが遅い時はあっても月に数回、これまで付き合って来た二年間は彼女を疑ったことは一度も無い。
そして調査を依頼をしてから二週間後、探偵から調査が完了したという連絡が来た。
翌日探偵社に行くと探偵は「伝えづらいのですが」と前置きをした後に調査報告書と書かれた書類を開いた。
そこには彼女が自宅から外出する様子や電車を利用する様子など様々な写真が撮られていた。
そして雑居ビルに入る様子や男とラブホテルに入って行く写真なども。
浮気…考えもしなかった結果に探偵の言葉が耳に入らなくなり、次々にめくられていくページをぼんやりと眺めるだけになってしまった。
しかし、写真を見ているうちに妻の浮気相手が一人ではないことで我に帰った。
20代や30代、50代と思われる男性まで、その数は20人を超えていた。
探偵は最後のページを開いてから俺の顔を見た。
「以上のことから○○さん（俺の名前）の婚約者○○さん（彼女の名前）はデリヘル型の風俗店で働いていることが分かりました。風俗店のホームページにも本人らしき人物が掲載されています」
探偵はそう言ってパソコンを操作すると、画面を俺の方に向けた。
動揺を落ち着ける間も無く画面を見ると、そこには「指名率ナンバーワン嬢」という大きな見出しと共に下着姿の女性の写真が載っていた。
その女性は目元を自分の右手で隠していたが、俺はすぐにそれが彼女本人だと確信した。口元や身体のライン、そして右手の甲の小さなホクロ、彼女と全く同じだったからだ。
画面に釘付けになっていた俺に探偵は「お気持ちお察しします」と穏やかに声をかけてきた。探偵からの報告は彼女がギャンブルで作った借金があるという情報で締めくくられた。
その後はよく覚えてない。
看護事務と言っていたのは全くの嘘だった。調査をした約二週間、彼女はほぼ毎日同じ雑居ビルに行き（いわゆる待機場所）、指名が入ると送迎車に乗ってラブホテルやマンションなどに入って行った。
金以外の目的で風俗で働く理由はないと思うが、今まで俺に金銭的に頼って来たことは一度もなかったから、借金をしていたことはまさかという結果だった。
弁護士にも相談に行き、風俗で働いている証拠があれば婚約破棄が出来るし、慰謝料請求が出来ると言われ、俺は数日悩んで決断した。
調査結果を聞いてから最初の週末に彼女と会って、全て知っていることを打ち明けた。証拠の写真は見せなかったけど彼女は全てを察したようだった。
彼女は「そう、ごめんね」と呟いただけだった。
俺は「どうして俺に頼ってくれなかったんだよ」と喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
彼女には「慰謝料は要らないけど探偵にかかった数十万の費用は払って欲しい」と伝えた。それから婚約破棄も。
彼女はどちらもすんなりと承諾した。
一ヶ月前、彼女は俺のプロポーズに涙を流して喜んでくれた。それまでの二年間もずっとラブラブだと思っていた。
俺の婚約はそれで破談になったけど、俺の選択は間違ってるかな？
ガルエージェンシー特捜班