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労働組合の「選挙の投票先」を問うアンケート、個人を特定される危険性も?

選挙で労働組合が「組織票」を集める手法について、以前の記事で扱った。今夏に行われた第25回参議院議員通常選挙にて、ある大手の労働組合が特定の候補者を当選させるためにどのような戦略を実行したのかということを、内部資料を入手して報じた。

 

今夏の参院選の様子。


参院選後のアンケート

このたび当サイトが新たに入手したのは、当該の労働組合が毎秋に実施しているというアンケートの内容だ。A3用紙に両面印刷されたアンケートで、表面の内容は毎年ほぼ変わらないという。裏面の一部に、年度ごとに異なる内容のアンケート項目が設置されている。今年度は、参院選に関わる項目があった。

 

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「労働組合の政治活動に対する意識」と題されており、参院選への投票の有無や、投票に行かなかった場合の理由を冒頭で尋ねている。情報提供者が驚いたのは、これらに続く設問だ。労働組合が「組織内公認候補」として選出した人物もしくはその人物が所属する政党への投票の有無とその理由を尋ねているのだ。

 

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踏み込んだ内容の設問も

その後に続く設問は、かなり踏み込んだ内容になっている。組織内公認候補について、「単組・職場役員などから対面で働きかけを受けましたか」と問い、その頻度も尋ねている。アンケート表面の冒頭には、地連名と組合名の記入欄がある。その情報と組み合わせれば、各組合での取り組み状況をある程度まで把握できるというわけだ。

さらに、「組合員である以上、組合推薦候補者に投票するのは当然だ」、「組合推薦候補者に対する支持依頼の電話やメールなどは、正直わずらわしい」、「労働組合は生活の安定や向上、政策実現のために、選挙や政治活動にもっと取り組むべきだ」といった問いに「はい/いいえ」の2択で答える設問もある。

 

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個人を特定される?

アンケートは無記名で、用紙に通し番号等はなく、提出も任意である。実際、情報提供者は提出しなかったそうだ。提出に伴うリスクがそれなりに大きいのではないかと考えたからだという。記入し終えた用紙は、所定の場所に提出する。回答期限が来ると、提出された用紙を回収して組合事務所に郵送し、さらにそこから総連に送るという段取りだ。

もし組合事務所が回収したアンケートを見ていた場合、小規模の組織であれば、年齢、家族構成、居住地の郵便番号の一部、勤続年数、雇用形態といった用紙表面の各種の設問から、回答者を特定することは容易だ。個人を特定されるリスク、そして特定された場合に起こり得ることを考えるとアンケートには回答できないと、情報提供者は述べる。


まとめ

たとえ表向きは「匿名」で実施されるアンケートでも、設問への回答結果を組み合わせると、個人が特定できる仕組みになっているかもしれない。今回紹介した事例に限らず、職場等でアンケートを求められた場合、安易に応じることには一定のリスクが存在する可能性があるということは、各自が十分に自覚しておくべきだ。


※モザイク加工は当サイトによるもの

高橋 

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