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「私達だけの結婚式」

忙しい仕事の合間を縫って、倉敷を訪れた。

倉敷駅に近く「ロマンティック街道」と銘打たれたその界隈は、懐かしい家並みが軒を並べる観光地だ。

 

 

休日の今日は見物客で賑わっている。カップルの姿も多い。

 


お祭りでもあるのだろうか、はっぴを着た子供たちが行きかっている。

 

 


賑わいの中を一人歩き、私は「倉敷IVYスクェア」に足を踏みいれた。

先ほどまでの賑わいが嘘のように静かだ。

 

 

教会から鐘の音が聞こえてきた。

私は足を止め、新幹線の中で読んだ手紙を思い出していた。


 

『親愛なるBOSS様。本当にお久しぶりです。

あなたと最後に会ったのは、いつのことだったでしょう。

…………

けれど、流れる月日もあなたとの思い出を消すことはできなかったようです。

岡山倉敷の「ロマンティック街道」その奥の「倉敷IVYスクェア」に教会があります。

そこで会ってください………。

ps

もし、あなたが来なくても、私はいつまでも待っています。』

 

 

 

鐘の音が終わる頃、そのひとがやって来た。

その笑顔。

最後に会ったあの日と、何も変わらない。

 

私は戸惑った。どんな顔をすればよいのか分からなかった。

近づいたその人は、笑みを浮かべたまま、傍のテーブルへ誘った。

誘われるまま、白いテーブルについた私の隣に座り、寄り添うように腕をからませてくる。

 

「どうしたの? 難しい顔して。怒ってるの?」

 

何も答えられる筈がない。

私は無言で首を振った。

 

「じゃあ、どうしてそんな顔して黙っているの?」

 

別に理由など無い。

沈黙を守る私に、上目使いで問いかけ続ける。

 

「どうしたの? 何か喋って?」

「・・・・・・」

「そう、どうしても口をきいてくれないのね、このスケベッ!」

「えっ!?」

「BOSSが中部ブロック忘年会の長岡温泉でこんなことしてたの、世間に訴えてやるわっ!」

 

 

 

 


 


「どわ~っ!!」

 

         

 


「いいわ、許してあげる・・・今日はメモリアル・・・ふたりだけの結婚式よ。」

 

 

 

 

 



「八坪、明日から網走(出張所)な。」

 

 

文:八坪&BOSS

 

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