巣鴨信用金庫(東京都豊島区)が、「キャッシュカードの一部利用制限について」という告知をホームページに掲載している。振り込め詐欺対策の一環であるという。この利用制限の結果、一部で混乱が生じていたことが関係者への取材で判明した。
過去3年以上にわたってキャッシュカードでの振込もしくは払戻をしていない70歳以上の客は、キャッシュカードによる振込の利用を停止、もしくは払戻限度額を1日10万円とした。制限を解除するには、キャッシュカードと本人確認書類を窓口に持参する必要がある。
この設定変更が適切に周知されていなかったために、トラブルが発生している。一例として、ある高齢客がATMで振込の手続きができず、職員に尋ねた。「現在、この口座は振込ができないようになっております」と職員は応じたが、客はその理由が分からないという。そこで職員は、先述の設定変更について説明した。
ところが、客は「事前の通知もなく、無断で設定を変えたのか」と激怒。「ホームページにて告知しました」と職員は釈明したが、客はネットを一切利用していなかった。「本人の許可なく、そのようなことをしてよいのか」と問われた職員は、「個別の確認はせず、一律に変更しました」と答えた。
すると客は、設定を解除してほしいと依頼した。「指定の書類に記入し、押印して窓口へ持参してください」と職員が説明したところ、客はさらに憤慨。「頼んでもいないのに勝手に設定を変更した上に、そんなことまでさせるのか」と述べ、家へ書類を取りに来てほしいと要求した。後日、客の自宅を訪問し、不手際を謝罪したという。
巣鴨信用金庫は、高齢客を大切にしてきたことで有名だ。特に、振り込め詐欺防止には力を入れている。
だが、本件は「行き過ぎではないか」と情報提供者は述べる。今回の措置も善意に基づくとはいえ、無断での実施はかえって客の不信感を招く結果となった。