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住みたい街ランキング常連の自由が丘、高齢者や障害者には「不自由」だった?

「住みたい街」ランキングの常連である、自由が丘(東京都目黒区)。「住みやすい街」、「おしゃれな日常生活」といったイメージが強いが、こうした世間の評判に異議を唱える人もいるようだ。今年6月には、「自由が丘で不自由な体験」と題する投書が東京新聞に掲載されたこともあった。投稿者は、転倒して負傷したために杖をついているという56歳の女性だ。

 

 


(1)女性の体験談

「いつものように駅で降り正面口へ行こうとしたが、階段しか見当たらない。駅員に聞くと、そのホームからは、別のホームを経由しなければ行けない。しかたなくホームの端から端へ痛む足で歩き、エスカレーターで別のホームへ上がり、またエレベーターを探して何とか改札口に着いた」。

さらに、改札口を出てからも困難が続いたという。「難所は駅だけではなかった。道の思いがけない段差、狭い道路をギリギリに通るバス。思わずつえを持つ手を止めた。危険すぎる」。そして、「オシャレでハイソで環境にも優しいイメージの街、誰もが自由に行き来できるはずの街は、なんと危険で不自由な街であろうか」と記した。

 

 


(2)現地の様子

このたび当サイトでは、実際に現地を訪れてみた。上記の女性が電車を降りたのは、大井町線の1番線ホーム(溝の口方面)であると思われる。このホームから階段を上がって連絡通路を歩き、再び階段を下りれば、正面口付近に辿りつく。だが、女性が指摘するように、この連絡通路は階段を上り下りしなければ利用できないという欠点がある。

            

 

 

連絡通路を使わない場合、1番線ホームからエスカレーターもしくはエレベーターに乗り、一旦は渋谷方面もしくは横浜方面の東横線ホームに上がらなければならない。そして、東横線ホームを経由して、正面口のあるフロアに下りる。東横線ホームには階段以外にエスカレーターやエレベーターがあり、このルートならば階段の上り下りは不要だ。

 

            

 

実際に二つのルートを歩いてみると、どちらも「便利」とは言いがたかった。連絡通路を使うために上り下りする階段は段数も思いのほか多く、特に暑い時期には高齢者や障害者には厳しそうだ。一方、エスカレーターとエレベーターを使うルートも、東横線のホームを経由するため遠回りで、使い勝手がよくない。

続いて、駅の周辺を散策してみた。女性が指摘していたように、近辺にはガードレールが全くない、もしくは片側だけの狭い道がある。記者が訪れた夕方の時間帯には、その道路を多くの自動車が行き来していた。また、日頃は不自由に感じないかもしれないが、足を怪我していたら歩くのが億劫になるのではないかと思われるような段差もあった。

 

             

 


(3)地元の人々の声

先述の投書での指摘について、街の人々に意見を聞いてみた。投書の内容に「共感する」という声は少なからずあったが、「言われてみれば、そうかもしれない」、「あまり気にしたことはなかった」など、これまで意識していなかったという人々が目立った。実際に歩行が不自由な状態にならなければ、不便さに気づきにくいのかもしれない。

狭い道路について、ある女性は、幼い孫と歩く時には「必ず手をつなぐ」と述べた。「道幅が狭いから仕方がないけれど、ガードレールがあったらと思いますね」という。段差に関しては、やはり「気にしたことがなかった」という声が多かった。ただし、1人の高齢者からは、「歩きにくいと感じることがある」という意見が聞かれた。

 


(4)まとめ

以上の結果から言えることとして、私たちは住み慣れた街について、その環境を「当たり前」と思いがちだ。その住環境が当然であると考えている限りは、よい点も悪い点も、なかなか見えてこない。高齢者や障害者の視点から再点検してみると、より住みやすい街づくりに向けての手がかりが得られるのではないだろうか。

 

高橋 

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