第50回衆議院選挙の結果、自民党は前回の2021年選挙から大幅に議席を減らし、191議席に留まりました。自民・公明両党を合わせても215議席と、過半数の233議席に遠く及びませんでした。これは自民党に対する国民の不信感の反映といえるでしょう。
自民党公式HPより
不信感の源泉 ――石破新総裁の「ご都合主義」
自民党に対する不信感の源泉は、単に不記載議員の個々の政治姿勢にあるというよりは、むしろ石破茂新総裁の「政治とカネ」問題撲滅への矛盾的な政治的態度、すなわち「ご都合主義」にあると考えられます。この「ご都合主義」は石破新総裁個人に由来するものではなく、自民党全体に浸透している「権力への執着」に起因しているといえます。
むろん、自民党はデフレからの脱却や平和安全法制の整備など、長期政権でこそ実現できた政策も多く、評価に値しますが、「政権の座に留まることを最優先」とするあまり、倫理・正義の観点が二の次になってしまうことを免れず、政治腐敗に対する一貫性を欠いた態度、すなわち「ご都合主義」が見え隠れしていることが明らかです。以下でその例えを見ていきましょう。
倫理・正義の破綻 ――不記載議員「非公認」と罰金刑を受けた菅原一秀「推薦」という矛盾
石破新総裁は、収支報告書への不記載問題を起こした安倍派の有力議員(萩生田光一や高木毅を含む12名)に対し、「非公認」とする措置を取りましたが、その一方で、現金やメロン・カニ・イクラなどの贈答品を配布して公民権停止処分および罰金刑を受けた菅グループの菅原一秀には「推薦」を与えるという矛盾した判断を下しました。もし石破新総裁が本当に「政治とカネ」の問題に真摯に向き合っているのであれば、菅原への推薦付与はあり得ません。なぜなら略式起訴の対象であった菅原の行為は、不記載議員の問題よりも一層悪質とみなされるべきだからです。
加えて、菅原への推薦は、衆院選の公示直後にこっそりと行われました。これは選挙期間中の批判を避けようとする打算的な判断が透けて見え、「ご都合主義」の一端を示しています。また安倍晋三元総理が率いてきた安倍派(清和政策研究会)を排除する一方で、菅義偉率いる「菅グループ」を優遇するという石破新総裁の意図が見られます。つまり見た目には「派閥解消」を掲げながらも、「菅グループ」という一大勢力(準派閥)を優遇し党内勢力を保つ矛盾した行動が浮き彫りになっています。
一貫したリーダーシップと公正な政治への期待
石破新総裁のこうした「ご都合主義」は、自民党全体の信頼失墜を招きかねません。国民が求めているのは、倫理観に基づく一貫したリーダーシップと、汚職を根絶する姿勢です。自民党には、政権維持に固執することなく、公正で透明な政治を実現することが強く求められています。
女探偵 堺浄(さかい・きよら)
政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。