(前回のつづき)
「裏の裏まで探らなきゃならないのが軍事探偵なんだ。・・・(中略)・・・嘘を言っていることがわかる特別の才能がある。普通の人間の心じゃできない仕事なんだ」
「軍事探偵(時代)はね、泥棒と詐欺と人殺しをすることより仕事がないんだから」
このように述べたのは、かの日露戦争でスパイ活動を行ったことでも知られる伝説の探偵、中村天風であります。
天風氏は一体どのような方法で情報収集していたのでしょうか?(如何せん、現在の探偵業務で用いる、所謂カメラで証拠を押さえるのが不可能な時代のことです)
なんと天風氏、敵国幹部の睡眠中にその枕元から機密情報を抜き取っていたのであります。また、敵の作戦会議中、円卓の下に気づかれぬように忍び込み、直に情報を収集したこともあったそうです。
如何に日本刀(人を斬る殺人の道具です。現在、許可なく所有することは銃刀法違反となります)使いの達人だったとはいえ、正に命を賭しての武勇伝。天風氏は、精鋭選抜された軍事探偵113名の内、生存し帰国できたわずか9名の内の1人であったと言い伝えられております。
また、男性としての中村天風という方は、着物の着こなしを含め、外見や中身においても正にイケメン。周りの女性たちはもちろん、男性たちをも魅了していたとのことです。
今でいう007か?
順風満帆だった天風氏ですが、探偵業務を終えて帰国後、当時不治の病とみなされていた結核に侵されてしまいます。今までの勇ましいパフォーマンスが発揮できなくなったのであります。
このスランプをきっかけに、アメリカやヨーロッパへ求道の旅に出る天風氏。伝説の探偵は、この旅から何を日本に持ち帰ってくるのでありましょうか?
(つづく)