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家に棲むストーカー  ~プロローグ

あなたの周りに、ストーカーはいるだろうか?
もしいたとしても、さすがに家に住みつかれたことはないであろう。

私の友人の、そのまた友人(23歳女性)から相談があった。

以前付き合っていた元彼氏が、今でも家に住みついていて大変困っています。しかも、出てけと言っても賃貸契約者は私なのに自分の家のつもりで、出て行ってくれません。どうにかして、この男を家から追い出して下さい。


一見、笑い話のような相談だ。しかし、会って話をよく聞いてみると、実際は猟奇犯罪になりかねないものであった。

全然家を出て行かないこの男に業を煮やした依頼者が、この男を追い出そうとしたときの事。
男はキッチンから包丁を取り出して彼女に差し出し


俺を殺せ!!殺さないとおまえを・・・!!


と恫喝した。卑怯な脅迫者がよく使う手だ。
彼女の悲鳴を聞きつけた隣の住民が警察に通報したことで大事には至らなかった。
駆けつけた警察官にこの男は「そんなことは言っていない!!」の一点張りでまんまと逃げおおせた。
彼女はこの一件で、自分の家であるのにもかかわらず、部屋に近づけなくなった。
そしてこの男はのうのうと部屋に居座り続けるのだった。
彼女を一時的に我々がかくまったが、住む所を逆に追い出された格好だ。

指令=我々がこの男を退去させる。

綿密な予備調査で男の身元調査を終え、この男との直接対決に挑む。


特捜6人と相談の女性

設定として、私が彼女の新しい恋人役になりすました。
深夜11時にもかかわらず、依頼者宅の電気はついている。
鍵とチェーンを閉めているストーカー男。
彼女が恐る恐るインターフォンを押す。


「おかえり~」


まるで自分の家かのように、鍵を開ける男。
何様のつもりなのだろうか?
彼女が帰ってきたことがよほどうれしかったんだろうか、声が異常に明るい。


今だ。

ここぞとばかり、部屋に乗り込む我々。
彼女本人と恋人、そしてその友達なので部屋に入ることに何も問題はない。


見る見るうちに男の顔が青ざめていくのがわかる。
「ち、ちょっとなんなんですか!?」
お前にそんな事を言われる筋合いはない。お構いなしに乗り込む。
あらためていっておくが、この男がここにいる権利など存在しない。

とりあえず、部屋に乗り込むことは成功した。
しかし、これからが本番。
粘着男が自ら部屋を出て行くように仕向けないといけない。

 

こうして、我々の長い夜が始まった。

 

つづく

 

 

渡邉文男

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