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『冨田真由さんの周りの人たちへ、そして冨田さんへ』 精神科医ヤブ

狂った男(決して「ファン」ではない)に刺されて重体となっていた冨田真由さんの意識が、6月7日に回復したとの報道があり、まずは一安心だ。

しかし、冨田さんの周囲の人たちには知っておいて欲しいことがある。


冨田さんが刺されたのは5月21日で、意識が回復するまでに2週間以上かかっている。意識の回復にそれほど時間がかかった理由はいくつか考えられる。

最もありえて、かつ最も楽観視できるのは、肺損傷が重篤で人工呼吸器をつけていたため「医療的に薬で意識レベルを落としていた」ということ(肺の損傷はミュージシャン志望にとって辛いだろうけれど)。
そして、あまり良くないのが、「身体的には回復していたが意識だけがなかなか戻らなかった」という場合で、これは脳に損傷があることを示唆する。


大量出血などで脳への酸素供給が減っても、それが短時間であれば脳の損傷はほとんどない。しかし、酸素欠乏がある程度の時間になると、CTやMRIといった画像検査では分からない程度の損傷が起こることがある。
その結果、手足の麻痺はないものの、「本人にしか分からない程度」の記憶障害や、「字が読みにくい」「文章を理解しにくい」「左と右がとっさには分からない」といった症状が出る。これを高次脳機能障害という。
人によっては「音を聞き分けるのが苦手になる」こともあり、これらはミュージシャンとしての夢を持つ冨田さんにとっては辛い症状となる。

ところが、上記したように「本人にしか分からない程度」の場合、周りからは「元気がない」「性格が変わった」ように見えたり、「事件のショックが尾を引いている」「心の傷」、トラウマ、PTSDといった精神科的な問題にされたりしてしまう。
本当は脳に残った小さな障害が原因なのに……。


周囲はその点に注意深く気をつけて欲しい。そして、もしこういう症状があっても、冨田さん自身は悲観的にならないで欲しい。
脳の機能は時間とともに少しずつ回復する。2年も経てばかなり改善する。

その2年は、20歳の冨田さんにとって決して短くはないだろうけれど、自分自身の回復力を信じて、音楽への夢を持ち続けて欲しい。

 

 

ヤブ 

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