情報提供・ご意見ご感想などはこちらまで! 記事のご感想は一通一通ありがたく読ませて頂いております。

タイムカードによる勤怠管理で「理不尽な扱い」!ブラック企業の実態を暴露

勤務先でのタイムカードを使用した勤怠管理に納得できないという声が多い。このたび取材した案件は、タイムカードによる勤怠管理の方法の是非にとどまらず、その他の論点も含めて総合的に検討する必要があるものだ。「ブラック企業に理不尽な扱いを受け続けてきた」と主張する情報提供者に話を聞いた。


不当な勤怠管理

情報提供者が企業から渡された契約書によると、早番の勤務時間は7時20分から16時50分、遅番は8時30分から18時だ。ところが、実際の勤務形態は契約時に提示されたものとは異なっていた。早番は30分以上早く来ることが義務づけられていた。遅番は18時前に退勤しなければならず、18時を過ぎても仕事をする場合は18時の時点で退勤扱いにしなければならなかった。

タイムカードによる勤怠管理は、本来は1分単位でなされなければならない。ところが、当該企業では30分単位での勤怠管理となっていた。毎時20分、50分で労働時間が管理されている。例えば、16時50分よりも前に退勤した場合、たとえ16時49分まで勤務しても、16時20分に退勤したことになる。こうした管理方法は妥当ではないので1分単位での管理に改めるよう上司に求めたが、拒まれた。

 

2019年5月のタイムカードの記録。
(画像をクリックで拡大表示)


勤務実態と異なる賃金

さらに、タイムカードによる勤怠管理と実際の勤務時間管理が一致していないという問題も。実際の勤務時間は、毎時0分と30分を基準として30分単位で管理されていた。例えば、早番は16時50分が本来の退勤時間で、ここまでが賃金の対象になるが、17時まで勤務しなければならない。遅番は8時30分までに出勤しなければならないが、タイムカードの勤怠管理基準に従って、賃金が発生するのは8時50分からとなる。

その他、仕事が忙しくて休憩をとれなくても、とったことにされていた。トイレに行くと、席を離れた時間が減給の対象になる。これらに加えて、タイムカードの1日当たりの合計勤務時間の欄は手書きであり、記録が改竄されることもあったと、情報提供者は明かした。こうして、実働時間と賃金が発生する時間の差が定期的に発生する結果、月単位、そして年単位で見ると、実際にもらえるはずの賃金を大きく下回ることになる。

 

画像(左):残業・休日労働時間明細書に記載された、2019年4月の勤務時間及び残業時間。
画像(右):2019年4月のタイムカードの記録。
(画像をクリックで拡大表示)


罵倒される日々

当初の話では、2か月間の研修期間を終えたら正社員に登用される見込みだった。だが、研修期間中の賃金は地域別の最低賃金を下回っていた。そのため、生活費が足りず、副業を始めたが、それが就業規則に反しているとの理由で、正社員への登用を拒まれた。一方、副業を禁じることの法的根拠を尋ねるとともに、就業規則とされるものの開示を求めたが、これらの要求に企業側が応じることはなかった。

就業規則違反に対する「けじめ」という理由で、研修期間終了後も最低賃金での契約となった。そして、「おまえは就業規則に違反している」と罵倒される日々だった。また、タイムカードによる勤怠管理と実際の勤務時間管理の不一致に納得できず、契約書に記載の通りに出勤していたところ、「遅刻常習犯」扱いされた。同僚たちからも「社会人としてクズ」、「人間失格」、「一緒に仕事したくない」などと、誹謗中傷を受け続けた。

 

2019年4月の支給明細書。
(画像をクリックで拡大表示)


労基署に相談すると…

その他、勤務時間中の怪我に対する労災認定が下りなかったり、情緒不安定な同僚から暴行を受けたりすることもあった。理不尽な境遇に我慢できず、情報提供者は今秋に退職した。実際の勤務時間に基づいて計算した場合の差額を未払い分として請求したが、企業は応じなかった。後日、退職証明書の発行を依頼したが、退職理由の具体的な記載を求めたにもかかわらず、「自己都合退職」と記されていた。

 

当該企業から送付されてきた退職証明書(画像の一部に当サイトでモザイク加工を追加)。
(画像をクリックで拡大表示)

 

情報提供者は、本件を労働基準監督署に相談した。ところが、労基署は「タイムカードは勤務先にいた時間の証明であり、実働時間の証明ではないため、賃金の支払いに違法性があることの証拠としては不十分である」と断言した。そこで、情報提供者は労働組合にも相談した。上記の「未払い分」の賃金、上司や同僚からの罵倒や暴行、就業規則の提示がなされなかったこと等について、労組の助力を得て解決を図っていきたいという。

 

高橋 

タイトルとURLをコピーしました