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美菜さんの過労死から8年目~ワタミを謝罪させた東部労組

2008年、居酒屋「ワタミフードサービス」に入社後2ヶ月で過労自殺した森美菜(26)さんの問題で、遺族がワタミと当時社長だった渡邉美樹氏らを相手取り損害賠償を求めた裁判が8日、和解が成立した。
1億3000万円の支払い命令を受けた渡邉美樹氏のFacebookには、「もっとも重い責任は、私にあることを認めます。」と、ついに全面的に非を認めた様子。

美菜さんの過労死から8年目~ワタミを謝罪させた東部労組
Facebookより

森さん夫妻が加盟している東部労組によると、和解内容はホームページに謝罪を掲載すること、日本の司法では認められていない「懲罰的慰謝料」を事実上支払う事、すでに時効済みの森さんの未払い賃金を支払うこと、森さん以外の従業員にも未払い賃金を支払うこと、労働基準監督署から是正勧告が今後出た場合には全従業員に周知すること、基本給に深夜手当を含めた額を記載する社員募集表示を見直すことなど、判決では得られない内容を認めさせたことも遺族が和解を選んだ理由と記載があった。

2012年からずっとご遺族に寄り添って戦ってきた東部労組の書記長の須田さんに取材をしました。


美菜さんの過労死から8年目~ワタミを謝罪させた東部労組
 (写真=須田さんと森さん夫妻)

〇ご遺族と共に活動する中で特に印象的だったり、悔しい思いをした場面はありましたか?
2013年6月に渡邉美樹氏が参院選の立候補をして、自民党本部の前で抗議行動をした時の事です。ご遺族も初めてだったので、警察の問題など心配して労働組合に過激にしない方がいいのではと言われましたが、あの場に立ったら私たちではなくお父さんが職員に対し胸ぐらを掴んで言った言葉や表情を見て娘を殺されたお父さんとお母さんの怒りを感じました。

自殺は覚悟を決めて飛び降りたりすると思われがちですが、それは違います。美奈さんの鞄の中から亡くなる直前に買ったシャンプーや目覚まし時計などのレシートがありました。美奈さんは明日も明後日も働こうと睡眠不足の朦朧とした意識の中で、結果そうなってしまいました。死ぬほど辛いならその前に辞めれば良かった言う人がよくいますが、周りがみんな同じような働き方をしている中で自分だけ辞められない。それぐらい声を上げにくい職場環境だったのです。

〇森さん夫妻は和解をどのように受け止めていましたか。
裁判長からの和解勧告がきっかけでしたが、和解するかは遺族が判断しました。過労死事件の和解はどこまで高い水準のものを勝ち取れたとしても喜べる訳でも遺族の気持ちが晴れる訳でもありません。類似した事件よりは他の従業員の残業代を払わせたり、和解ならではの意義は判決をとるよりもありましたが、渡邉美樹やワタミを許す気持ちは遺族も私たちも無いです。

〇ご遺族にとっては8年目にして初めての渡邉氏からの直接謝罪ですか?
そうですね。去年の3月に法廷の中で頭を下げる場面はあったと思いますが、あくまでも道義的な謝罪でしたので。


〇この「ワタミ過労死闘争」の勝利で、今後も労働組合が担う役割は大きいと思いますがどうですか。
ワタミ側は最初から遺族に対しお金は払うという姿勢でした。過労死という事件から弁護士のような金銭的対応になるのは普通なのかもしれませんが、遺族が違和感や不満を感じた部分でした。労働組合が入ることで、お金以外の成果を勝ち取ったといえます。大企業の過労死事件は役員個人の責任にはなりにくいですが、そこを認めさせた運動の成果はあります。
和解の協議を色々してきて、私たちの条件をワタミが丸のみするという形になりましたが労働時間の上限を決めましょうという提案は明確に拒否していました。
経営者の不適切な労務管理の実態が裁判の過程で明らかになりましたが、監視の目が届かなくなったら元に戻ると思います。ワタミのような会社はごまんとあります。もちろん過労死がでて遺族から助けを求められたら出来るだけ協力しますが、そこは本来の私たちの役割ではありません。本当に重要な事は、働いている人たち自身が立ち上がり団結して、経営者と交渉すること。そういう一つ一つ職場環境を良くしていく運動を私たちは広めたいです。
 

去年の裁判で「予(われ)、否(よから)ざる所の者は、天これを厭(す)てん。」と法廷で言い、8日の和解で「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」と締めくくった渡邉美樹氏。

美菜さんの過労死から8年目~ワタミを謝罪させた東部労組


自民党はブラック企業の象徴である渡邉氏の例を参考に、誰もが働きやすい社会を作ってもらいたい。

 

 

土岐 

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