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宅のソナタ 第9話

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宅八郎です。

南北軍事境界線にある板門店に、ボクは初めて韓国側からやって来た。
マジックハンドを持って。

ボクが初めて北朝鮮に行ったのは95年、他の観光客と同じツアーだった。
が、2001年はたった一人で個人取材旅行をした。

その時もボクはマジックハンドを持っていった。
そして板門店の停戦協定調印場を訪れた。
軍事停戦委員会会議室にあるマイクの位置が丁度「事実上の国境」に当たっている。
ボクはそこにマジックハンドを置いた。
北から南へ国境を越えて。

それとはまったく逆に、今回ボクは南から北へマジックハンドをかざしてみたかったのだ。


それだけではない。
ある「約束」があった。

2001年に板門店を訪れた際、帰りのクルマに警備の兵士が乗り込んできた。
軍人への接触は禁じられているから、異例の事だ。

兵士は若者だった。
簡単な朝鮮語で話しかけてみた。
彼は笑った。
15日間の休暇が出て実家に帰るのだと言う。
そこで平壌まで乗せて欲しいのだと。
会話と共に親しげな笑顔が続いた。
ボクは「親戚や実家には子供がいるか」と聞き、お菓子などをたくさんプレゼントした。
最後にボクは彼に告げた。
「今度は南朝鮮(北では韓国をこう呼ぶ)から板門店を訪れるつもりです。その時もボクはマジックハンドを持っているでしょう」
すると若い兵士は「もしも南朝鮮側からマジックハンドを振ってくれたら、こちらからも手を振ります」と言った。

友情に近い何か。
ボクは彼との約束を果たしたいと思ったのだ。

今回板門店で「向こう側」に彼がいないか、探した。
が、見つけることは出来なかった。
そこでマジックハンドを大げさに振り回してみた。

すると韓国側の人間があわててマジックハンドを取り上げた。
「何やってるんですか!?」
かなり怒られた。
しかし北朝鮮側に「あいつ、また今度は向こうから来てるよ~」と思われたんだろうな(笑い)。

(つづく)

宅八郎

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