沖縄県のうるま市というところがある。そこで闘牛が行われているらしい。
「闘牛で借金をこしらえた。」
「身を持ち崩した。」
沖縄ではたまに聞く話である。まるで悪女にのめり込んだ男の発言だ。
きっと闘牛にはそれほどの魅力があるに違いない
私は早速、那覇から高速にのり石川インターでおり駐車場に車をとめ、「闘牛場」受け付けへと向かった。
入場料は2500円だった。これが高いのか、安いのかわからない。
そのときに対戦表を渡された。それがコレだ!!
「胡座スペシャル闘牛大会」
白組の「ジンベイ親分 810kg」が凄く気になった私。えらい沖縄らしい名前だな。
どうやら人間の格闘技のように階級別になっているようだ。
時間が早かったせいかドームには、人がまばらである。
沖縄の二紙がスポンサーになっているだけあって、テレビ中継もきている。
(開始一時間前)
開始時間になると徐々に人が増え始めてきた。女性の姿も多いことに多少びっくりした。そして主役の牛の登場である。筋肉が隆々としているのがすぐにわかる。
スペインなどの闘牛とは異なり、無理やり牛同士を戦わせるので
大声で掛け声をかける。
おにぃさんも結構いる。
ふと、隣を見たらおじさんが携帯電話でなにやらがなりたてている。
どうやら試合が終わるたびに誰かと金銭のやりとりをしているみたいだ。私はしったかぶりをし、思い切って話しかけてみた。
「今日は、どうですか?」
「全然、だめだよ。どれも根性がなくて」
「負けているんですか?」
「もう、15日の年金の日までお金ないよ。」
「いくらつぎこんだんですか」
「財布に入っているお金全部よ」
質問の答えになってない…
そんなこんなのやりとりをしている内に、このおじさんの家でご飯を食べることになった。沖縄では初対面でもよくあることだ。
しかし今日の闘牛で相当負けこんだのか、お互い交わす言葉がない。
妙な哀愁も漂っている。
なんだか気まずいので、このおじさんの家を一時間ほどで後にした。
来たときは逆方向の那覇方面へと車を走らせると…
(おそらく先ほどの牛を運んでいる車)
思わず「牛もこうやって運ぶのか」と独り言をつぶやいていた。
神里 純平