現在Netflixで配信中の「地面師たち」
最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュな邦ドラマで行かせていただきます。
イケメン俳優とアイドル女優とスポンサーの学芸会と化したテレビドラマを嘲笑うNetflixではちょくちょく想像を超える良質邦ドラマが作られる。多分に漏れず「地面師たち」は今年の邦ドラでも屈指の名作と感じた。
東京都港区の一等地である寺院の土地を巡って、地面師と呼ばれる不動産詐欺集団と超大手ゼネコン、警察の三つ巴の騙し合いと知能戦、心理戦が繰り広げられるクライムサスペンスである。
劇中では公的資料、身分証明書の偽装や口頭での押し合い引き合い、尾行張り込み、情報収集など知能犯罪らしい描写が多くみられるが、主人公演じる綾野剛の尾行と張り込みのシーンや刑事役の池田エライザの尾行などは細かい点までリアリティーのある描写があった。
例えば、寺院の女性住職の素行調査シーンで数日経ってやっと住職が出てきて張り込みから尾行を開始するところであるが、張り込み部屋から飛び出した辻本(綾野剛)に竹下(北村一輝)が「○○方面!!!!」と叫ぶところは細かかった。
何故かというと、車にしろ徒歩にしろ対象者が出た方向を確認せずに尾行を開始すると、距離と時間のラグが生じて見失う可能性が高いからだ。
仮に対象者が車を使い、こちらも車を使って尾行する場面を想定してほしい。
赤丸が対象者宅マンション、青丸が張り込み部屋マンションとする下図を使って解説すると、対象者が北か南のどちらに移動したのかを確認せずに張り込み部屋から出て車に乗り込むその間は、追う側は対象者を目視で確認できていない。当然追われる側のほうが追う側よりも2テンポほど速く動くので、対象者は先に車に乗り込み発進し移動する。
車なので移動速度は速く、5秒もすればどこに行ったのかは分からなくなる。
方向さえ把握しておけば、その方向へ向かえば対象者の車をいずれ発見できる可能性が高い。
というかなり細かい描写が、ドラマ内の随所に描写されており、ラブホテル前での張り込みや小型カメラ、GPS装置(他人の車につけるのは違法)などにも注目してみてほしい。
勿論探偵的なこと以外の描写もしっかりとリアリティーのある細かい描写がなされているので、ドラマに出てきた業界で実際に働いている人はより楽しめるだろう。
ただ、尾行の時に対象者の乗るタクシーの後ろを走る車をわざわざ派手に追い越して、真後ろにべた付けするのはちょっとやりすぎな気もする。
NAKANO
ガルエージェンシー大阪本部
探偵歴6年目。映画に憧れ過ぎて探偵になってしまった男。雑多な知識で調査をこなす現役探偵(0120-000-783)
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