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「助かるはずの犬が理不尽に殺処分された!」動物保護団体の暴露情報に騒然

つる太郎の殺処分

「助かるはずの犬が理不尽に殺処分された」という暴露情報がSNSに出回ったことで、騒然となった。暴露したのは、徳島県を中心に動物保護活動を展開する団体「ヨンナナ」である。「つる太郎」と呼ばれている犬の殺処分は不当であるとして、徳島県動物愛護管理センターへの異議申し立てを行った。

つる太郎は人慣れしていなく攻撃的であるという理由で、野犬に違いないとセンターは判断した。だが、人が近づくと威嚇するなど、つる太郎の反応は野犬とは明らかに異なると、ヨンナナは主張する。それどころか、「お座り」という言葉に従ったり、人の手から餌を食べたりした。ヨンナナは、その様子を撮影した動画も公開している。

 

つる太郎が威嚇する場面。

 

つる太郎は、「お座り」と言われるとそれに従ったり、ヨンナナ代表の手から餌を食べたりした。

 

つる太郎は飼われていた犬である可能性が高いと、ヨンナナは考えた。そこで、ヨンナナで引き取って世話をして、譲渡先を探すつもりだった。ところが、つる太郎の殺処分が決まったことをセンターから突然告げられた。ヨンナナは撤回を求めたが、「既に決まったことだから変えられない」という。そして、つる太郎は殺処分された。


指摘されている主な問題

つる太郎の件をヨンナナが暴露するに至ったのは、理不尽と思われる殺処分への問題提起に加えて、センターへの強い不信感の表明でもあった。このたび公開された動画では、両者のやりとりの一部も公開されており、その内容からもこれまでの複雑な経緯や認識の不一致が伺える。そこで、ヨンナナが挙げている主要な論点を見てみたい。

 

ヨンナナと話すセンター所長。

 

ヨンナナが問題視する点の一つが、公示の方法だ。施設に収容された個体に関しては、殺処分を下す前に2日間にわたって情報を公示しなければならないことが、法律で定められている。だが、野犬は公示しなくてよいという独自の方針で県は運用していると、ヨンナナは批判する。「全て公示している」とセンターは言うが、見たことがないという。

第二に、野犬や引き取りの困難な個体を、センターは施設内の「プラットホーム」という場所に隠していると、ヨンナナは主張する。シャッターが閉じた状態では外部から見えず、センター側に都合がよいというのだ。第三に、ヨンナナに脅されたとの理由で、センターは今後の取引を拒否したという。恫喝の事実はないと、ヨンナナは述べている。


ヨンナナへの取材

当サイトでは、ヨンナナに取材を申し込んだ。ヨンナナ代表によると、センターによる公示の方法は不当であると考え、環境省に問い合わせたこともあるそうだ。だが、対応は各県に一任しているため、基本的に介入しないとの回答だったという。「野犬への対応も含め、殺処分の選定基準が全てセンターに都合がいいようにできている」と憤る。

ヨンナナでは、譲渡対象以外の個体も可能な限り引き受けるという方針であり、飼育可能な状態になるまで責任を持って面倒を見た上で、貰い手を探してきたという。このような活動の過程で、センターとのトラブルが絶えなかったそうだ。過去には、納得のいかない点について質問状を出したこともあったが、回答を得られなかったとのこと。

これまでにネット上で公開しているのは、ヨンナナが把握しているセンター関連の重大な問題のごく一部に過ぎないという。それらの証拠や記録も、大量に有しているそうだ。今後もセンター側が理不尽な対応を続けるのであれば、そうした問題について情報を公開する用意があると伝えたところ、「脅した」と言われて取引を断られたという。


センターの見解は

センターにも話を聞いた。かつては、首輪がついている、人に慣れているなど、ペットだった可能性があると判断できる個体はホームページにて、それ以外はセンターで常時閲覧可能な一覧にて公示していたそうだ。その後、方針を見直し、現在はセンターに収容された個体については、野犬も含めて全てホームページで公示しているという。

プラットホームに関してはヨンナナの主張に不正確な点があると、担当者は指摘した。センターに収容された個体は全て、一旦プラットホームに収容されるという。病気の有無の確認や必要な治療等を経て、収容施設へ移すとのこと。ただし、施設に収容しきれないという理由で、引き続きプラットホームに入れざるを得ないことはあったという。

センターでは慢性的に収容スペースが不足しており、ヨンナナのように引き取りの困難な個体ばかりを優先しようとするのではなく、譲渡可能な個体から対応してほしいと考えていると、担当者は述べた。また、ヨンナナに脅されたのは事実であり、一度ではないという。その具体的な内容を尋ねたが、詳細に関する回答は差し控えたいとのことだった。


おわりに

ヨンナナとセンターの主張には、全く一致しない点が多い。各種のトラブルに関する具体的な証拠が出てこない限り、議論はどこまでも平行線を辿る可能性が高そうだ。双方とも、現状では相手との信頼関係が失われていることを挙げていた。「1頭でも多くの個体を助けたい」というヨンナナの理念は貴重だと思われるが、その実現の道のりは険しい。

今回の件で改めて実感したのは、「動物愛護」や「保護」といった言葉が、立場が異なれば全く違う文脈や前提で語られているということだ。何をもって「動物愛護」、「保護」とするのか、そのためには何が必要であると考えるのか。ヨンナナとセンターの見解の不一致から、それを読みとることができるのではないだろうか。

ヨンナナとセンターとのやりとりを収録した動画に、印象的な場面があった。センター所長が手を差し出すと、つる太郎は激しく吠えた。一方、ヨンナナ代表の膝に擦り寄ったり、ヨンナナのスタッフの手から餌を食べたりしていた。自身の置かれた状況や、これから自分の身に起きることを、つる太郎は察していたのかもしれない。

 

 

 

高橋 

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