先日、菅義偉官房長官の好物であるというパンケーキが話題になった。そのきっかけは、「出没!アド街ック天国」(テレビ東京)で赤坂見附を特集した際に、「菅官房長官のお気に入り」として紹介されたことだった。ホテルニューオータニ(東京都千代田区)内の「SATSUKI」で提供されており、価格は2800円。
菅官房長官への非難
サービス料と消費税が加わると、3000円を超える。その価格に驚いたという人々も多いようだが、本件が注目された主な理由は、日頃から自民党に批判的な人々を中心に、菅氏への非難の声がTwitterを中心に相次いだことだった。そして、そのような主張に対する異論も数多く提起され、論争に発展した。
れいわ新選組の渡辺てる子氏は、「宴会のコース料金でもなければ、食事の料金でもない。つまり『おやつ』だ。おやつに毎度3000円・・・。かの政府の閣僚たちの一人の経済感覚のほどが知れる」と書いた。これを読んだ小説家の室井佑月氏が賛意を示して持論を展開したことで、騒動に拍車がかかった。
室井氏は言う、「ふつうのおうちではホットケーキは子どもの友達がきゅうにたくさんやってきたときの、安くできる腹持ちのいいおやつですよ」、「この値段の感覚の感じ方の開きがあると、大勢の人がなにを食ってるか、ってほんとの意味で知ろうとしない」。これ以降も、室井氏は菅氏に対する批判のツイートを連発した。
気になる味は?
上記のツイートを見た読者から、当サイトに情報が寄せられた。情報提供者は、大手出版社で編集者を務めた人物だ。「ぜひ一度、食べに行ってみてください。普通のホットケーキとは格段に違いますから、妥当な価格だと僕は思います」。編集者だった頃、打ち合わせ等で店を利用した際によく食べていた、思い出の味なのだそうだ。
早速、現地へ向かった。平日の昼間だが、広い店内のかなりの席が埋まっていて大盛況だ。注文すると、「20分くらいかかりますが、よろしいですか」と尋ねられた。注文を受けてから作るので、提供までに時間を要するというわけだ。注文後まもなく、3種類のメープルシロップがテーブルに並べられた。好みに応じて、使い分けてほしいという。
やがて、待望のパンケーキが運ばれてきた。マロンクリーム、渋皮栗、そしてマカロンが添えられている。パンケーキの食感をあえて一言で表現すれば、「ふんわり」かつ「滑らか」。表面はサックリと仕上がっているが、内側は口の中でとろけるような柔らかさだ。マロンクリームやメープルシロップと共に食べると、まさに「絶品」である。
パンケーキの断面。表面はサックリ仕上がっているが、中は柔らかな食感だ。
批判は正当なのか
菅氏への一連の批判を読むと、氏が定期的にこのパンケーキを食べているような印象を受けるかもしれないが、実際は1~2カ月に1回程度だという。菅氏でなくても、甘いもの好きの人々ならば、「そのくらいの頻度であれば、それなりの金額を払ってでも自分の大好きなものを食べたい」と考えたとしても不思議ではない。
また、高級ホテルとはいえ、店の利用客の大半は、ごく日常的な服装で来店していた。20代半ばくらいから高齢者まで、年齢も多様だ。いわゆる「典型的な金持ち以外は来ない」というような店ではない。「庶民感覚」に訴えて菅氏を批判した人々のツイートは、実態とは大きくかけ離れた、的外れなものだったと言わざるを得ない。
落語家の立川雲水氏に至っては、「どんな場所でどんなサービスを付けて提供してるのか知りませんが一食3000円でパンケーキを商ってるお店に対しては一度税務調査に入った方がいいと思います」と書いたが、これは暴言に等しいだろう。実際、このツイートに対しては多くの異論が噴出して炎上した。
まとめ
前出の情報提供者は言う、「こんな形で店まで批判されて、本当に残念です。良質な材料を使い、高度な技術で手間をかけて作ったものは、それだけ価格も上がって当然なのです」。菅氏を非難したツイートは、自民党の支持者だけでなく、店のファンである人々の反感も買うこととなったようだ。