3年前のこの時期、児童相談所などが入る「港区子ども家庭総合支援センター」(東京都港区)の建設をめぐって騒動が発生したことを覚えているだろうか。計画が浮上すると、地元関係者から「都心の一等地に児童相談所はふさわしくない」という声が上がった。本件は世間の注目を集め、様々な議論が飛び交った。
児童相談所は、今春に完成した。3年前の騒動の際に当サイトに情報を寄せてくれた近隣に勤務する人物は言う、「当時、マスコミが煽るかのように盛んに報じていたのは、一部の『声が大きい人』たちの発言でした」。事態はより複雑だったことは、当サイトの記事でも扱った通りだ。
児童相談所に反対した人々は、「高級店が並ぶ一帯の品格」を訴えた。だが、裏通りには古くから住む人々の住宅街が広がる。また、高級店が並ぶ「みゆき通り」と並行する「骨董通り」には、庶民的な店が少なからずある。以前の取材時には、長引く不況の影響が及んでいた骨董通りに、新規オープンする店が相次いでいるとのことだった。
その後、コロナ禍で再び状況が変わった。「私がこの辺りで働くようになった時には既にあった婦人靴の販売店をはじめ、古くからの店が次々に閉まりました」。コロナ禍の少し前にオープンして、短期間のうちに廃業してしまった店もいくつもあるそうだ。シャッターの閉まった建物が並び、日が暮れると闇に包まれてしまう。
今春に児童相談所が完成した際も、マスコミ関係者たちが現地を訪れた。だが、それらの報道はまたもや「高級店が並ぶ一帯」ばかりに焦点を合わせたものだったと、情報提供者は憤る。コロナ禍で街が激変していることや、その変化の中で実際に勤務したり生活したりしている人々の実態に目が向けられることはなかった。
話題になりやすい一面のみを切り取った報道は危うい。それを人々が鵜呑みにするならば、不正確なイメージが流布し、物事の全体像は見失われる。