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子どもの教育で大事なこと

 

 岸先生の記事を読んで、自分よりも子ども達の将来が不安になりました。
今、小学生の娘2人の親として働いて衣食住と健康の確保、最低限の教育を受けさせることに尽力しているつもりです。(中流なりの精一杯のつもりです)
 でも、災害や国内の治安低下に加えて最近の国際情勢を考えると、近い将来にどこかの国のようなことが起こるのではと不安になります。
今 親として、お金を残す以外に何かしてあげられること、もしくはしなければいけないことはあるでしょうか? すもも


 すももさん、すごく大事な質問をありがとうございます。私も二人の小学生を持つ親として、数十年後の日本を想像すると子ども達の将来が非常に心配になっています。
 それでは、親が自分の子どもの将来のために何をやっておくべきでしょうか。私は個人的には、子どものクリエイティビティ(独創的なアイデアを自分で考えられる能力)を高めてあげることが一番大事ではないかと思っています。というのは、今の学校教育ではこの能力は高まらない一方、将来的に機械(=デジタル)が人間の仕事の大半をやるようになる中で、機械では絶対に代替できないであろう人間の最大の能力の一つだからです。(ちなみに、もう一つはホスピタリティ)

 それでは、子どものクリエイティビティを高めるにはどうすれば良いでしょうか。海外の教育先進国ので議論/実例から、①何が問題かを自分で発見・定義する能力、②それに対するクリエイティブな問題解決を考える能力、そして③コミュニケーション能力の3つが大事ではないかと思います。
 それぞれについてちゃんと説明したらすごく長くなるので、ポイントだけ書くと、子どもは学校で常に先生から問題を与えられてその正解を見つけることを鍛えられます。しかし、大人になって仕事をするようになると、特に今のように変化が激しい時代では、まだ誰も気がついていない重要な課題を見つけ、それに対する独自の問題解決を考案するという能力が、個人の付加価値として高く評価されるのです。(ちなみに、この能力は専門職など難しい仕事のみならず、普通の仕事やエンタメ・スポーツなどあらゆる仕事で役立ちます)

 この能力を強化するために親は何ができるでしょうか。初歩的なやり方として、子どもに勉強を教えたり会話をする過程で、“なんで?”を繰り返すだけでも効果があります。例えば私は、子どもがおもちゃやスマホを欲しいと言ってきたら、“なんで欲しいの?”と聞きそれに子どもが答えると、“なんでそう思うの?”と更に突っ込みます。同じ話題についてこの“なんで?”攻撃を5回くらい繰り返し、それをいつもやっていると子どもなりに結構考えるようになります。

 あと、子どもの教育に関しては、流行りに流されてはダメです。例えば、グローバル時代は英語能力だと、子どもをインターナショナルスクールに通わせる家庭もありますが、私は意味ないと思います。将来的に自動翻訳の技術が進歩するのもありますが、実際のグローバル社会では、英語を流暢に話せるよりも、英語は下手でも中身がある話を出来る人の方がよっぽど高く評価されるからです。実際、私は28歳で留学に行って英語がようやく話せるようになり、今も発音は下手ですが海外での仕事では何も困りません。同様に、プログラミング教育やSTEM教育も流行っていますが、個人的には将来IT人材が不足する、IT人材の方が稼げるという風潮に乗っかっているだけに見え、子どもの論理的思考力を養うというメリットしか感じられません。

 そのような流行りの教育よりも、子どもには勉強でもスポーツでも習い事でも何でも良いから、自分が好きなことを精一杯頑張らせて結果を出して評価されるという成功体験(例えばスポーツで地道な練習を毎日頑張り、その成果として試合に勝って周りに評価される)を味あわせてあげる方がよっぽど大事ではないかと思います。ある分野で成功体験を学んだ子どもは、他の分野でもそれを応用して頑張れるようになるからです。

 最後に一言。今の子どもは小学生の頃からスマホを持ち、また学校教育でも一人に一台タブレット端末を配るようになっていますが、子どもがこれらのデジタル機器を使い過ぎないように注意してください。クリエイティブな能力を高めるには自分の脳を使って集中して考えることが最も大事で、デジタルの使い過ぎはその最大の敵になるからです。(デジタルで検索して労せず解答を見つける、ネット上で色んなサイトを回遊するのに慣れて集中力が落ちる、ゲームのやり過ぎで考えるより直感的な判断を優先するなど)


岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

 

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