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物価はまだまだ上がる ~岸博幸

 

 今年の春闘では多くの大企業が大幅な賃上げを行い、賃上げ率も3%台後半と30年ぶりの高い数字となりました。人手不足が深刻なこともあり、中小企業や非正規雇用の賃金も多くのところで上昇しています。去年から様々なモノの値段が大幅に上がる中でようやく賃金も上昇し始め、めでたしめでたしと言いたいところですが、私はちょっと心配になってきています。はっきり言って、大企業は大盤振る舞いし過ぎだからです。

 企業によっては全社員の給料を10%上げたり、新入社員の初任給を一気に5万円上げたりと、景気の良い話ばかりが報道されますが、当たり前の話、給料を上げても働く人の生産性が上がる訳ではありません。従って、企業は大盤振る舞いした人件費増を製品・サービスの価格に更に上乗せする必要があるのです。そう考えると、日銀は今年後半には物価上昇率が2%より低い水準に下がると予測していますが、その予測が外れて物価がまだまだ上がり続ける可能性も否定できないのではないでしょうか。


 ちなみに、一年前と比べると多くのモノやサービスの値段がすごく上がった感じがしますが、例えばマクドナルドのビッグマックの値段は米国では5.35ドルであるのに対して日本では2.91ドルと、日本の多くのモノの値段は相対的にまだまだ安いのです。

 実際に、米国で最も物価が高いニューヨークのある高級スーパーで、何の変哲もないハムチーズサンドイッチがなんと29ドル(約3,800円!)で売られていると、現地の新聞で非難轟々となった位です。



 もし日本でも米国のように物価が上がり続けると、大幅な賃上げが実現した一部大企業を除いて働く人の実質賃金はそう増えないので、景気にはマイナスとなります。そうなった時に日銀が金融政策をどうするのかについて、金融投資をしている人は早めに頭の体操をしておくべきです。

 そのための参考情報を一つ提供しておくと、様々な情報から、新総裁の植田氏はスタンス的に金融機関寄りである可能性が高いと思います。もともと日銀は伝統的に政治の意向に敏感なのですが、それに加えて植田総裁が金融機関に配慮した意思決定を行うとしたら、黒田前総裁の頃と異なり、今年の秋以降は日銀の金融政策が迷走を始める可能性も否定できないと思います。

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岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

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