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国は子どもの虐待にさらなる予算を費やすべき

BOZZと岸博幸さんの対談「特別企画」にインスパイアされ子どもの虐待の現状を調べてみたところ、その数の多さと虐待の背後にある孤立や格差の深刻さを知り、無力な自分の存在に気付かされました。虐待の犠牲となった子どもを心から悼み、微力ながら今の私にできることを考えてみたいと思います。

虐待は、家庭という閉鎖的な空間で行われるという特性から、閉ざされたドアをこじ開け、子どもを助け出すアクターを必要とします。本来ならばそれが児童相談所であり、市区町村であり、そして警察です。権力を執行し子どもを親から切り離すという意味では家庭裁判所も重要な役割を担います。しかしこれら行政には「縦割り問題」が立ちはだかり、救える命を救えないという悲劇がこれまでに何度となく繰り返されてきました。

厚生労働省が作成している虐待死亡事例等の「検証報告書」によると、幼児・児童の虐待相談件数は急増しており、2020年度以降は20万件を超えました。驚くべきことに、子どもを死へと至らしめる主たる虐待者の5超を占めるのが「実母」です。


図1 虐待する人の属性

虐待行為として最も多いのが「身体への虐待」であり、続いてネグレクト。性的虐待は事実関係が明らかになるまでに時間がかかることから「その他」には性的虐待も含まれていると推察します。


図2 虐待行為

そして虐待される年齢は0歳児が最も多く約半数を占めます。


図3死亡した子どもの年齢

筆者が声を大にして訴えたいのは、救える命を救いたいということです。

最も深刻なのは、子どもが死に至るまでの期間に幾つもの「救えるチャンス」があるにも関わらず、それが周囲の人に認識されていない、ないしは、認識されていたにせよ、何らかの理由により人が介入できずにみすみす見逃されているという現状です。

繰り返しになりますが、その原因は、児童相談所、市区町村、警察、裁判所などの関係各所の連携不足があります。日本の縦割り行政がボトルネックになっていますが、これらが密接に連携しなければ家庭の情報を共有することができません。そういう観点から縦割り行政を統合・連携させるという役割を担う「こども家庭庁」が鳴り物入りで創設されましたが、評価に値するかは判然としません。

BOZZは「特別企画」で私立探偵が虐待現場の証拠や情報を収集したり調査をしたりすることの意義を語っておられましたが、家族や近隣住民への聞き取り、目撃証言、写真、音声、行動記録などの間接証拠を集めることは、現場を抑えるのが難しいと考えられている虐待において重要な意味を持つのではないかと思われます。

国は虐待で死亡する子どもをゼロにしなければなりません。防止策に前例もへったくれもありません。十分な虐待防止策予算を捻出し、早期介入のためのプログラムに着手して欲しいと心から願っています。

 

 

 

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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