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マスコミが殺到した火災現場、報じられなかった住民トラブルと過去の事故

2020年1月14日の早朝、東京都豊島区で大規模な火災が発生した。店舗兼住宅の2階から出火し、建物が全焼。逃げ遅れた70代の男性が死亡し、二人が軽傷を負った。周辺の建物にも燃え広がり、4棟が焼けた。マスコミ関係者が現地へ殺到するとともに、近隣住民らが撮影した動画や画像もTwitter等に出回った。

 

火災事故が発生した建物1階の青果店。

 

当サイトでは2019年2月に、現場付近を別件で取材したことがあった。昨年に死去した文学者のドナルド・キーン氏について扱った際、氏が生前お気に入りで日常の買い物や散歩で頻繁に訪れていたという商店街を取り上げた。このたびの火災が発生した建物は、この商店街に面していたのだ。


人気の店も営業休止に

昨年の記事の取材に協力してくれた人物から、今回の火災に関連する情報が寄せられた。情報提供者によると、火災が発生した建物の1階の一部には、昔から青果店があった。そして、1階の残りのスペースは貸店舗になっていた。かつては鮮魚店がそこを借りていたが閉店し、その後にインド料理店が入った。

インド料理店は人気を博していたが、火災の影響で営業できない状態に。情報提供者は言う、「お店を経営しているのは気さくな人で、遠くからもファンが通ってきていました。オープンして間もない頃、小さいお子さんも一緒に店のチラシを配ったりしていたことを覚えています。地元の人たちからも愛されていた店で、気の毒です」。

 

手前がインド料理店、奥が青果店。

 

一方、一部の近隣住民には悩みもあったようだ。この店の客には、各地から訪れる外国人が多い。店内が狭いこともあり、夜遅くに店外に出て、路上にて大声で談笑する客がいたというのだ。彼らが日本の習慣を十分に理解していなかったのかもしれないが、我慢の限界を超えた住民が路上で客を怒鳴りつけ、トラブルになったこともあるという。


当日の状況は

当サイトでは、このたび現地を訪れた。火災が発生した建物の周辺には、焼け焦げた臭いが漂っていた。近くの店に勤務する人物に話を聞くと、「あの日は朝から、本当に大変でした。私が出勤してきた時は、まだ火が上がっていました」との答えが返ってきた。周辺にロープが張られて、警察署や消防署の職員が救命・消火活動に当たったという。

当日は、建物周辺の道路が通行止めになったそうだ。通行止めは解除されたが、新たな心配の種も。「『建物が倒壊の危険があるから、しばらくは近づかないようにと、警察の方が言っていました。でも、なぜか今は規制も解除されて、普通に建物の前を通れる状態です。いつ倒れてくるかと思うと、怖いですよ」。

 

火災事故が発生した建物の裏手。

 

内部の様子(建物裏手の路地から撮影)。


周辺で火災が多発

別の人物からは、「このへんは、昔から火事が多い」という証言が得られた。このたびの火災が発生した建物の斜め前にドラッグストアがあるが、かつてはそこに雑貨店があった。この雑貨店で大規模な火災が発生し、全焼。それからしばらくして、今度はその裏手にあった、雑貨店の倉庫でも火災が発生して全焼したという。

「倉庫には燃料や紙製品もいろいろあったようですが、同じ所で続けて火事が起きたので、『放火されたんじゃないか』とか妙な噂が流れました」。さらに、このたびの火災現場からは少し離れた場所ではあるが、同じ商店街にあった自転車店や飲食店でも火災が発生して、いずれも建物が全焼したとのこと。

 

かつて雑貨店の倉庫があったという場所。現在はスーパーマーケットの駐車場になっている。

 

前出の情報提供者に尋ねると、「建物が密集していて道も狭くて消防車が入りにくいから、消火活動に手こずります。結果として、消火が間に合わなくて丸焼けになってしまうんだと思います」。かつては木造の家屋が多かったことも、一因ではないかという。近辺には高齢の住民も目立つとのことで、災害発生時の避難対策の整備も課題だ。


まとめ

今回の火災に関する一連の報道では、本記事で扱ったような周辺事情や過去の経緯は伝えられなかった。事故に直接的には関係のないことは、速報を目的とした記事やニュースでは無視されがちだ。しかし、そうした報道では触れられることのない側面を掘り起こすことで、地域の実情や今後の課題が見えてくるというのも事実ではないだろうか。

 


高橋 

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