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BOZZの8/21の記事へのコメント ~岸博幸

 BOZZの8/21の記事の内容には私も大賛成です。

 ただ、未だに全感染者数や医療体制の大変さばかりを報道するマスメディアもひどいと思いますが、それ以上に頭にくるのは行政の対応です。
そもそも厚労省は「軽症者は自宅療養を基本とする」という方針を明確にしていますが、この方針は言葉を変えれば「軽症者は病院に来るな」と言っているに等しいのです。これは、医療行政や医療現場に関わる人は口が裂けても絶対に言ってはいけないし、やってはいけないことではないでしょうか。
高齢者や小さなお子さんなどが発熱したら、当然本人やその家族はすごく不安となります。そうした時、解熱剤を処方されるだけでも、またはお医者さんが「大丈夫」と言ってくれるだけでもすごく安心なはずです。そうした当たり前のことをする権利が医療の供給側の事情だけで奪われたのです。

しかも、そうした医療の需要側へのしわ寄せを避けるための供給側の努力も遅すぎます。政府は8/24にようやく感染者の全数把握を見直す方針を明確にしましたが、コロナ対策専門家有志は8/2にその方向を提言していたのを考えると、この程度のことを実現させるのに3週間以上もかかったのです。
私は、厚労省が「軽症者は病院に来るな」と言ったことで、日本は先進国ではない、国民皆保険なんて嘘っぱちであることを行政が自ら証明したと思っています。コロナ対応を2年以上もやっていながら未だに何でも後手後手というのは、厚労省が無能であり、総理官邸もそれを修正できない(しない?)証左だからです。

 そして、同様にまったく理解できないのが小池都知事の発言・行動です。8/19に小池都知事は全数把握について、「全体が見えなくなると、かえって現場が混乱する」と発言しています。
しかし、これは下手なコメンテーター並みの酷い発言です。医療の供給側の事情しか考えていないのが明らかだからです。かつ、現場が混乱しているのは、むしろ全数把握に伴う作業量の増大や、コロナの弱毒化が進んでいるのに未だに発熱外来を中心に対応する体制などが原因であることは明らかです。
 加えて言えば、8/21の東京新聞の報道によれば、医療逼迫の緩和の切り札となるはずだった東京都の酸素・医療提供ステーションは、利用率が2割と低迷したままです。その原因が、ステーションの利用に当たっては東京都の担当部署を経由する必要があり、受け入れ可能かをステーションに直接照会できないという、これも供給側の勝手な事情に過ぎません。

 さらに言えば、東京都は都民割(旅行支援)を9/1から再開しようとしています。一方で人流増加を促す政策をやろうとしながら、その一方で全数把握を事実上擁護したり、酸素・医療提供ステーションの利用改善もせず、医療提供体制を改善しようとしないのですから、政府以上に劣悪かつ支離滅裂な対応になっています。

 もちろん裏には色々と複雑な事情があってこのような醜態となっているのでしょうが、結果として”東京改革”を訴えて当選した小池都知事が”東京改悪”をすすめるというのは、もう情けないです。

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

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