情報提供・ご意見ご感想などはこちらまで! 記事のご感想は一通一通ありがたく読ませて頂いております。

袋小路の自民党 ~岸博幸

 前回の続き的な内容になるのですが、旧統一教会問題を巡る自民党の対応もかなりマズいのではないかと思っています。

 所属国会議員の調査結果が甘過ぎるという点はもちろんですが、それ以上に大丈夫かと心配になるのは、この問題に対する行政上の対応が不十分な中で、岸田総理が「所属国会議員は・・・しがらみを捨て、当該団体との関係を断つ」と明言したことです。

 というのは、現行制度の下で本当に“関係を断つ”には、例えば事務所スタッフや選挙ボランティアの募集に応募してきた一般人に対しては、「あなたはどの宗教を信じていますか?」と質問しなければなりません。でも、これをやった瞬間、その国会議員は憲法違反を問われることになります。旧統一教会が宗教法人である以上、憲法20条の信教の自由の侵害となるからです。企業だって新入社員の面接などの際、絶対にそんな質問は出来ません。
 だからこそ、本来はまず旧統一教会に対する行政上の対応を明確にして、政党などがそれに基づいて憲法違反ではない対応を出来るようにしなければならないのです。

 考え得る行政上の対応としては、例えば旧統一教会から宗教法人格を剥奪するという手もあります。ただ、宗教法人法の改正には長い年月がかかることが予想されるので、これは現実的ではありません。
 その場合、フランスの反カルト法のような法律を制定し、宗教法人とは別の次元で問題ある組織を特定できるようにする手もあります。日本でも、例えば暴対法で暴力団は排除されますし、また、かつてはオウム真理教の事件を受けて、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(オウム新法)を制定した経験を踏まえ、旧統一教会にターゲットを絞った新法を制定する手もあるかと思います。

 そうした行政対応をしっかりやった上で、合法的に(宗教の差別ではなく法律上問題がある団体が対象)“関係を断つ”のならば分かります。しかし、そうした周到な準備・対応をせず、本件への行政対応は役所任せで、今の世の中の騒ぎへの対応を政治の側だけでやろうというのは無理なのです。
 なので、岸田政権にはこれが正念場と思ってしっかりした対応をして欲しいです。じゃないと、10月からの臨時国会の議論も旧統一教会問題ばかりになりかねません。でも、景気は既にかなり悪くなってきているし、安全保障問題での腰の据わった対応が求められる中、日本にそんな余裕はないのです。

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

タイトルとURLをコピーしました