長い期間入院した事でほかの入院患者達とも仲良くなり、よく共有スペースでテレビの音をBGM代わりにしては雑談をする日々を過ごしていた。
ある日、私が食後の運動として廊下を散歩していた時に新しく入院した80歳ぐらいのお婆さんが私と仲の良い人と共有スペースで雑談している姿を見かけた。私はその雑談に参加せず廊下を散歩した後、自分の病室に戻り就寝についた。
翌朝、共有スペースに行きテレビを観ていたら、そのお婆さんが来て私に話しかけてきた。
「野球のニュースを観ても良いかしら?」
特に観たい番組があった訳ではないのでそのお婆さんに「どうぞ、好きな番組を観てください」と返事をする。すると、そのお婆さんは大のヤクルトファンらしくヤクルト愛を語り始め、巨人が大嫌いであると文句を言い出した。私は野球に興味は無いが、そのお婆さんの語り出したヤクルト愛に相槌を打つ。
20分ぐらい経った頃かな?
お婆さんは私に両親の年齢を聞いてきた。
正確な年齢を答えられなかったところ、お婆さんは怒り口調で
「何で両親の年齢をちゃんと覚えてないのよ!!ちゃんと親孝行しなさい!!私は両親がもう居ないから親孝行したくても出来ないんだよ!!」
と説教が始まったのである。私は勝手に親孝行をしていないような言い方をされたのと、自分の正義を押し付けるお婆さんにかなりムッとしたが我慢してその説教を聞き流した。
その日の夜7時頃、共有スペースから大音量で野球の試合実況が私の病室まで聞こえてきた。
『絶対にあのババァだ!』と思い、私はイヤホンをしてスマホの動画を観て過ごす。
消灯時間の夜9時になると部屋の電気が消える。それでも大音量の野球実況、時々お婆さんが拍手する音も聞こえてくる。
『周囲に気を使わない、自己中なババァだな!!』と思っていた矢先、看護師が注意する声と反抗するお婆さんの声が聞こえてきた。5分程するとテレビの音が消えたので、渋々お婆さんは自分の病室に戻った様子であった。
スポーツニュースが始まる時間になったのでそろそろ例のお婆さんが現れると思い、私達は一旦その場を離れると丁度そのお婆さんが入れ違いで入ってきた。
手に新聞を持っていたので視線を向けると、まさかの読売新聞だった。
『ババァ、読売は巨人だぞ!』
と私は心の中で叫ぶのであった。
その自己中婆さんは1週間程で退院した。
ガルエージェンシー松戸 代表・安和 大(0120-546-764)
都内のガルエージェンシーにて約10年間、調査員として携わり2022年にて松戸市でガルエージェンシーの代表として開業。しかし、開業して間もなく足を派手に骨折し、入院する事に。様々な調査の中でも浮気・離婚・素行調査を得意としております。