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バラマキ合戦に成り下がりつつある少子化対策2

 

 私の少子化対策への見解について質問をいただきましたが、すごく大事な問題提起もしてくれているので、長くなりますが質問の内容を詳細に記すとともに、それに関する私の回答も書いておきます。


政治家はすぐに金をバラマキはじめますが、本当にお金の問題かな、と考えてしまいます。うちのばあちゃん、お金なくても1人で3人の子供育てていますし、当時は社会保障も充実していませんでした。実は十分な賃金を得ても、充実した社会保障があっても、今の日本では少子化は加速するのではないか、と思っています。
1月14日の産経新聞に「日本人は恋愛が苦手」という記事がありました。人の繋がりが希薄になり、昔であれば結婚を世話してくれる人がいて時期がくれば伴侶を得て子供が生まれていたのが、恋愛結婚が中心になって恋愛弱者が結婚できなくなったことが日本の少子化を加速させる原因になっている、という内容で納得のいくところです。
ぜひ政治家の方には、単にお金を配るというアプローチではなく、問題の本質を考え、頭を使って対策を実行してほしいです。1万円を配ったら1万円の価値しかないですが、1万円で2万、3万の価値が生まれる政策を考え、実行に移して欲しいですね。 藤沢

 藤沢さんの仰る通りだと思います。役人や学者が議論すると、すぐに外国の数字と比較して、“日本は子ども関連の政策予算のGDP比が欧州より低い!”とか言って、予算を増やすことだけに注力しがちですが、日本はずっと景気が悪くて格差も拡大しているし、昭和の時代とは若者の意識も大きく変わっているという当たり前の点も前提とすべきと思います。

 その観点から、個人的には子ども一人にいくらバラまくかも必要だろうけど、その前に正規雇用と非正規雇用の賃金格差を早く是正し、かつそもそも景気を良くして国民の将来不安を取り除くとともに、デジタル世代の若者の特徴を踏まえた新しい政策のアプローチも必要と思います。

 ちなみに、小池都知事もバラマキ合戦に参戦していますが、自治体の首長が本来もっとも注力すべきは、子育てしやすい環境を充実させることです。その典型的な成功例は千葉県流山市で、行政以外に地元の住民も参加して女性でも働きながら子育てしやすい街を実現させています。
 こうした周辺の政策をしっかりさせないと、子どもの頭数に応じてカネをバラまき続けるだけでは絶対に少子化問題は解決できないと思います。



少子化対策で子供をつくってほしい!と一言で言っても、
①すでに子供がいる家庭に更にもう一人つくってほしい。
②結婚しているが子供が欲しくない家庭に子供をつくってほしい。
③結婚していて子供が欲しいのにできない家庭に子供をつくってほしい。
④独身者に、結婚して子供を一人つくってほしい。
等あって、それぞれで対策は全く異なると思いますし、東京都の5000円対策は③と④の人たちには「やっぱり無理か~」としかならないように感じます。
また、メディアは街頭インタビューやアンケートで、“5000円じゃつくる気になれない”、“今のサラリーでは子供を育てられないから作らない”等の声を報じていますが、答えている人たちがばらばらで、何をやっても政策批判しか出ないような聞き方をしているように感じます。
政府の少子化対策は、何をどうしたいのでしょうか? やま


 やまさんのご指摘もとても重要です。そう、少子化政策のターゲットとなる人たちはかなり多様なのです。やまさんの分類に従うと、ざっくり言えば、バラマキ政策は①と②の層には多少効果あるでしょう。

 ③については、バラマキよりも既に政府が実施している不妊治療の保険適用が効果的です。
 一番難しいのは④の層です。特に収入の低い非正規雇用の方や、異性とのコミュニケーションが得意でない若い世代などがここに集中していると思いますので、この層に向けてはかなり多様な政策が必要となります。

 政治家も官僚も基本的には真面目なので、少子化対策を通じて出生率を上げて人口減少のペースを緩めたいと考えているのは事実だと思います。(今回については、政治の側では4月の地方統一選で勝つためにバラまきたいという邪な思惑が入ってしまってますが。。。)

 ただ、問題は、政治家は問題意識があっても政策に詳しい人が少ないので、政府の官僚に中身を丸投げにしてしまうことです。官僚の特性として、縦割りが徹底されているので自分の役所の所掌の範囲でしか考えない、前例主義が徹底している、新たな政策を作る場合は大胆な中身よりも利害関係者との調整が優先されます。これでは大胆な政少子化対策が講じられるはずありません。
 早くこの日本の中枢の体制を大きく変えない限り、正しい大胆な政策で日本の課題を解決するのは難しいと言わざるを得ません。


岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

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