今年、北朝鮮はすでに7発ものミサイルを日本海に向けて発射しました(7月14日時点)。かなりの頻度であるばかりでなく、短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルなどの種類も拡充してきており、明らかに北朝鮮は挑発行動を強めています。今日は弾道ミサイル防衛(BMDシステム)を取り上げ、日本の領土、領空、領海を防衛することの重要性について考えてみます。
日本におけるミサイル防衛システムの中核は、自衛隊のパックスリー(PAC3:Patriot Advanced Capability-3)です。パックスリーはアメリカ合衆国レイセオン社のシステムで、日本はこのシステムを購入しています。もっとも1980年代から国内でのライセンス生産もしており、ミサイルの一部や関連システムを三菱重工業が担っています。
パックスリーがたまたま市ヶ谷の防衛省にある際に視察したときの様子
もし、北朝鮮がミサイルを日本に発射したら、
1.アメリカの早期警戒衛星や日本の早期警戒システムがミサイルを探知
2.防衛省や自衛隊に情報伝達
3.地上のレーダーシステムがミサイルの軌道を追跡
4.迎撃の可否を決定
5.防衛省と自衛隊の指揮官が迎撃命令を出す
6.PAC3部隊が出動、発射準備
7.ランチャーから迎撃ミサイル発射の準備を完了
8.敵のミサイルを迎撃
となります。
迎撃が成功すれば被害を最小限に抑えることができますが、迎撃が失敗する場合もあります。だから国民保護の観点から、避難経路やシェルターの設置などを進めなければいけません。行政府にも立法府にももっと真剣に取り組んでいただきたいと思います。
私は、日本に向けてミサイルを発射した国に毅然と対応すべきと考えます。2014年、第二次安倍内閣は集団的自衛権の行使を認める閣議決定を行いました。翌年には平和安全法制が成立し、自衛隊が集団的自衛権を行使できるようになりました。防衛大臣の権限が強化され、緊急時の指揮命令がスムーズに行われるようになったと理解して構いません。
問題となるのは、自衛隊の防衛能力だけでは北朝鮮のミサイル攻撃を完全に防ぐことは難しいということです。敵のミサイル発射基地を先制して攻撃する能力が必要ですが、日本国憲法第9条(以下、9条)は戦争を放棄し戦力の保持を禁じていますから自衛のための実力行使は最小限度となります。問題は専守防衛(自国防衛に徹すること)の理念です。依然として中国、韓国、ロシアなどの近隣諸国のみならず国内でも「敵基地攻撃能力は専守防衛の理念を超えている」という主張もあります。
9条をいつまでも後生大事にしたところで平和は訪れません。平和は祈っていれば実現するものでも、9条を守っていれば実現するものでもありません。可及的速やかに憲法改正をして、他国の脅威から自国を守れる国に生まれ変わらなければなりません。
少し前ですが、パックスリーを目の前にして緊張しました。
女探偵 堺浄(さかい・きよら)
政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。