「サントリー専用です」
渋谷駅前（東京都渋谷区）にある自動販売機の空き容器回収ボックスの「謎」を調べてほしいという依頼が、このたび読者から寄せられた。場所は、渋谷センター街の入口付近だ。情報提供者は昨秋にセンター街を訪れた際、その自販機で飲み物を購入した。飲み終えて空き容器を回収ボックスに投入しようとして、驚いた。
「このゴミ箱はサントリー専用です 他のゴミを捨てないで下さい！」と書かれた貼り紙があるのだ。「不法投棄は犯罪です 大変迷惑しています」、「違法あるいは不審な行為が発見された場合、記録映像を元に警察へ通報します」、「防犯カメラ稼働中 ２４時間監視録画中」といった警告も。これに類する内容の、他の掲示物もある。
ゴミで塞がれた投入口
上記の警告表示が貼られているのは、サントリーの自販機の横に設置されている、空き容器の回収ボックスだ。情報提供者曰く、特定の企業の製品専用の空き容器回収ボックスは初めて見たそうだ。また、「残念な光景」を目撃したとのことで、この回収ボックスの投入口がゴミで塞がれている様子を撮影した画像も送られてきた。
情報提供者が２０１９年９月に撮影した画像。
当サイトでは２０１９年１２月中旬と下旬、２０２０年１月の計３回にわたって現地を訪れ、実態を定期的に確認した。いずれの訪問時も、近辺に空き容器等はほとんど散乱していなかった。だが、回収ボックスの投入口の一部はゴミで塞がれていた。自販機と回収ボックスの隙間に挟み込んで捨てられているゴミもあった。
サントリーに取材
掲示物には、自販機を設置している書店名が書かれている。書店に尋ねたところ、自販機のメンテナンス、製品の補充、空き容器の回収等は全てサントリーが行っているので、詳細は同社に聞いてほしいとのことだった。そこで、サントリー食品インターナショナル株式会社に取材を申し込んだ。すると、広報の担当者から詳細な回答が届いた。
先述の警告表示は、 2019年の初夏から回収ボックスに貼られているという。「タピオカドリンクをはじめとするプラカップの回収ボックスへの投入が非常に増え、毎日のように投入口が塞がれてしまう状態が続いたため、設置先様と協議して、そのような表示を致しました」と担当者は説明する。
こうした掲示物があるのは、現時点ではこの場所のみであるという。ただし、清涼飲料業界全体で、空き容器の回収ボックスに啓発目的のステッカーを貼るという活動を展開しているそうだ。そのステッカーとは、本記事に掲載した画像にも写っている、「リサイクル目的に空容器だけを集めています」と書かれたものだ。
周辺が混雑する時期には、回収ボックスの投入口を覆って、一時的に使用できなくすることもあるという。ハロウィン、クリスマス、スポーツの日本代表の試合時などには渋谷に大勢の人々が押し寄せ、他社製品の空き容器や様々なゴミが大量に投入される。さらに、ゴミで投入口が塞がれて、空き容器やゴミが周辺に散乱するというのだ。
投入口がテープで覆われている様子。２０１９年１２月、クリスマスの直前に撮影。
まとめ
なぜ、回収ボックスに空き容器以外も投入する人が後を絶たないのか。理由の一つとして考えられるのは、周辺にゴミ箱が少ないということだ。だが、昨年の記事で扱ったように、渋谷区としては今後、公共の場所のゴミ箱を減らしていく方針らしい。各所に設置すると回収の負担が大きいという理由であり、代わりに今後は回収の頻度を上げるという。
いずれにせよ、本件の場合、マナー向上の呼びかけばかりか、警告表示さえ根本的な解決にはなり得ていない。人通りの非常に多い駅前ゆえに、周辺にゴミ箱等が見当たらなければ、他社製品の空き容器やゴミを回収ボックスに大量に投入されてしまう。それどころか、ゴミによって投入口を塞がれると、回収ボックスは機能しなくなる。
このように様々な問題を抱えている場所で回収ボックスを設置し続けることには、多大な労力を要する。解決への道のりは険しいが、自販機を設置している企業が地道な努力を重ねていること、それによってゴミの散乱がある程度まで防がれていることは事実だ。そうした取り組みと現状を多くの人々に知っていただきたいと考え、本記事を配信した。
高橋 