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虐待を撲滅したい ――イネイブラーを救え

先週、「探偵ファイル」の記事でまたもや幼い子どもの虐待死を知り自分の無力さに言葉を失ってしまいました。今日は、虐待の異常性を認識しながら、それでいて子どもへの虐待を助長したり見て見ぬふりをする「イネイブラー(enabler)」に注目し深掘りしていきます。

イネイブラーは、多くの場合、虐待されている子どもの「生みの母」です。「子ども」「生みの母」(妻)、「血のつながりのない父」(内縁の夫)、というパターンで「夫」が「子ども」を虐待し、「生みの母」がイネイブラーとなり「子ども」を死に至らしめるという事件が頻繁に起こっています。虐待者「アビューザー(abuser)」を通報するなり別れるなりすればいいのに、イネイブラーは何をぼんやりしているのでしょうか?

イネイブラーは子どもを守る行動を起こしません。黙って見ているか、最悪の場合はアビューザーの側に立ってアビューザーを煽ったり虐待を助長したり子どもを責め立てたりします。一体なぜ??

心理的にイネイブラーはアビューザーに恐怖を抱いており、それでいてアビューザーとの関係が崩壊することを恐れるがあまり、それが子どもを追い詰めることになると知りながらアビューザーの側に立ち自己の身の安全を確保するそうです。とんでもないことです。

しかしイネイブラーが形成される背景にも深刻な問題があります。十分な教育環境がなく無知であるために虐待の深刻さを認識できないイネイブラーもいるようですが、それは少数派でほとんどのイネイブラーはそうではありません。イネイブラーが育った家庭には、多くの場合、歪んだ家族間の権力関係があったり、それによってトラウマを抱えているケースが見られるそうです。

イネイブラーを止めたいと思っても、社会的な孤立という深刻な問題が立ちはだかります。家族内で虐待が起こっていることを相談できる人というのは相当に親しい人でない限り難しいため、一人で抱え込みがちになります。例え相談したとしても自分が責められる可能性が高く尻込みしてしまうことが多いようです。

責められても、問題視されても、何をされてもイネイブラーを今すぐ止め、子どもたちを救ってほしい。実の母親から助けてもらえないのですから子どもは強い精神的なショックを受けます。おのずと大人を信頼できず、対人関係を築くことが難しくなります。また虐待されるのは自分のせいだ、などと、無意味に自分を責めたり価値がないと思い込んだりするかもしれません。

私は、虐待を撲滅するために「イネイブラーへの支援」こそが重要だと思うのです。

各自治体には相談窓口が設置されています。ほかにもカウンセリングに行ったり、警察に行ったり、各方面の支援はあることはあります。だけど今一歩すすんで、イネイブラーを恐怖から解放し現実逃避から連れ戻し、何かしらの第一歩を一緒に踏み出していこう、そんな支援のあり方はないでしょうか。

探偵も力になりたいと考えています。我々も、虐待の現場で複雑に絡まった人の権力関係や心理状況に対応すべく、日々精進して参りたいと考えています。

お声がけくださればお話伺いに行きます!

ご相談はNPO法人児童虐待ZEROまで。

 

 女探偵 堺浄(さかい・きよら)

政治家を経て、生成AIやITを駆使し過去の事件を分析する女探偵に。社会科学領域の研究者(慶應義塾大学大学院を経てPh.Dr.)でもある。掘り下げたいテーマは、女性はなぜ政治の世界で「お飾り」になるのか、日本の「タテ社会」と「ムラ社会」は不変なのか、内部告発は組織の不条理に抵抗する最終手段なのか。

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